囚われの姫君は本当に無害なのか
〜偽りを空へ、真実を地へ〜






「結局、気のせいじゃないですかあ?ってことで終わったの?」
む〜とミーアが言うのは、キラがこの家を訪ねてきたことだ。
ミーアからキラが訪ねてきたことを知り、アスランはすぐに監視に連絡を入れた。けれど返答は異常なし、だ。
その時のことを思い出して、アスランは苦笑して頷く。

「聞き込みもしたらしいけどな。まあ、仕方ないさ」
「何でよ」
「アスランの情報やこの家の情報を隠すため、アスランとジュール隊長とその副官が持てる力を全て叩き込んで作ったセキュリティだよ。
いくらキラ・ヤマトくんのハッキング能力が素晴らしいとはいえ、破られるはずがない」
第三者の声に二人が顔を上げれば、ギルバートがリビングに入ってくる。
残っていた仕事をしていた彼が戻ってきたということは、ようやく一段落したのか。
アスランがお疲れさまです、と腰を上げる。そして紅茶でいいですかと尋ね、キッチンへと入っていく。
「つまりどういうことですか?議長・・じゃない、ギル」
ミーアの向かいに座ったギルバートが笑う。

「つまりだ、ミーア。キラくんに情報を渡した誰かがあそこにいるのだよ」

「え」
ミーアが目を見開く。
「それって、え、あ、ああ!もしかして、クライン派?」
「その可能性が一番大きいね。ただあそこの責任者はクライン派ではないし、部下にもいない」

クライン派にとってはギルバートもミーアも快くない名だ。
アスラン個人は評価が分かれるだろうが、ザラの名を持っている。クライン派にとってのザラもまた快くない。
だからこそ監視役にクライン派は入っていない。また、アスラン・ザラがいるため、ザラ派もクライン派と同様だ。

「情報が少ないんだ」
キッチンから戻ってきたアスランが、ギルバートに紅茶を差し出す。
礼を言ってそれを受け取ったギルバートとアスランを見ながら、ミーアはソファにもたれる。
「やっぱりそれってえ」
「自由が制限されるっていうことは、得られる情報も多くはないってことだからな」
「仕方がないとはいいたくはないがね」
こればかりはどうしようもない、とギルバートが苦笑する。
「でも、今ももしかしたらクライン派とキラさんが接触してるかもってことよね」
ラクス・クラインを取り戻す、そのために。
「こちらで把握できる限りではまだだけれどね。把握できないところではもしかするだろう」
本当にままならない、とギルバートが言えば、アスランが目を伏せた。




* * *




ソファに男が一人腰かけている。
目の前の画面には桃色の髪を背に流し、草原の中、鳥と戯れながら歌う少女が一人。
静かなメロディに澄んだ声を乗せたそれは、少女が活動していた当時はプラント中を駆け巡り、癒した。
それを目を閉じて聞いていた男は少女が次の歌に入ったところで目を開け、隣に黙って立っている男を見た。

「なるほど。罪人の言葉であるからこそ、真偽を確かめるべきではないのか、か」

ギルバート・デュランダル、アスラン・ザラ、ミーア・キャンベル。
三人の監視を任されている課に、アスラン・ザラから連絡があったという。
予定にない来客があった。それがオーブ特使キラ・ヤマトだと。
調べ、そんな記録はないと返せば、もっと入念に調べるべきだと。
罪人であるからこそ、その言葉を疎かにしていいものではないと。

「報告に来たものが怯えておりました」
怒鳴られたわけではない。静かに諭すような言葉であったというが、アスラン・ザラの放つ威圧感に負けたらしい。
「あのクルーゼ隊のエースであった男だからな」
くくっと男が笑えば、立っている男が笑い事ではありませんとため息をつく。
「また同じことがあったらどうすれば、と怯えて仕方ありません」
「それはそれは。だが」
男は画面に視線を戻す。
「次はないだろう」
立っている男がはっとした顔をする。
「準備は」
「整っております」
「では」
そう言って男は足元でぎゅっとクッションを抱きしめて、ただただ食い入るように画面を見ている少年の髪を撫でる。
少年が顔を上げると、男が笑う。

「行ってくれるかい?」

少年がぱああっと明るい顔になる。そして何度も頷く。
「ついでに話をしてきてもいいよ」
「いいの?」
首を傾げる少年に、男は頷く。
「ああ。話してみたかったんだろう?彼らと。と言っても、歌姫の方はまだ会えないが」
「いい。歌姫の守護神と話せるだけでも嬉しい。ありがとう、父さん」
少年が伸び上がって男の首に抱きつくと、男が背を撫でる。
「楽しい時になればいいがね」
「うん」
そうして二人揃って画面へと視線を戻す。
少女が微笑んでいる。
ピンクの妖精、癒しの歌姫、プラントの平和の象徴。そんな肩書きを持つ少女、ラクス・クライン。


「我らが歌姫のために」


男の声に、立っている男が一礼した。

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オリキャラすいません。が、これからもちょっと出張ります(汗)。
そしてせっかくアスランとミーアが一緒に出てきたのに、アスミアになってません(滝汗)。
本当は腕組んでたはずなんですが、アスランがギルにお茶淹れにいくせいで削りました。
これじゃアスミアじゃなくてギルアスだ・・・。

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