囚われの姫君は本当に無害なのか
〜偽りを空へ、真実を地へ〜






「何で、どうしてここにいるの、アスラン!!」

キラ達がどれほど止めても聞き入れることなく、プラントへと帰って行ったアスラン。
そのアスランの行方が知れなくなった。
アスランは確かにプラントへと帰った。けれどそれからアスランの情報が入ってこない。
どうにか掴んだ情報では、アスランは裁判にかけられ、赦された。
しかし、戦後の混乱に乗じて現われた宇宙海賊の討伐隊に任命され、プラントを出たという。
そこから先は全くアスランの情報が全く入ってこない。調べても調べても分からない。
どういうことなのだろう、と不安で、心配で。
そのアスランが今、キラの目の前に立っている。

無理やりプラントに連れ戻されたラクスを取り戻すため、キラはプラントへと上がってきた。
私がいたらないせいですまない、とカガリは申し訳なさそうにキラに特使の任を与えてくれた。
必ずラクスを連れ戻し、アスランの情報を掴んでくるから、と約束をした。
けれどラクスへの面会は拒否され、代わりにと言わんばかりに現われたのはギルバート・デュランダルの護衛。
オーブの特使に一議員の護衛。舐められていると思ったが、それがアスランだとは少しも思わなかった。

「プラントに帰ってから全然連絡くれないで!どれだけ心配したと思ってるの、アスラン!!」
アレックス・ディノ、そう名乗ったアスランは、いつかのスクリーングラスをはずし、胸ポケットにいれると、すまないと言った。
「すまないじゃなくて、ちゃんと説明して!何でここにいるの!?討伐隊に入ったって」
「ああ、アスラン・ザラは討伐隊に籍があるな。それより座れ、キラ」
「それよりって・・・!!」
「キラ」
強くキラを呼んだアスランに、いつもと様子が違うことに気づきキラは眉を寄せる。
そして再び座るよう促すアスランに渋々ながら従えば、アスランも席についた。
「アスラ、」
「結論から言う。ラクスをお前に返すことはできない」
「な!?」
アスランについて問いただそうとしていたキラは、遮るように言われた言葉に頭が真っ白になった
「何で!?ラクスは僕達とオーブに帰るはずだったんだよ!?プラントにもそう言ったのに!!」

なのに無理やりプラントに奪われた。
エターナルも元々プラントの、ザフトのものだと同じく奪われた。
キラ達からすれば、ふざけるな、だ。
エターナルはラクスの艦だ。ラクスに賛同する人達が集う艦だ。
けれどそんなキラ達の抗議は受けつけられなかった。
だからまずオーブに戻り、カガリに特使としてプラントへ遣わしてもらったのだ。
ただオーブの特使だということは、オーブの名代ということだと。キラの行動がオーブにも響くことを忘れるなと釘をさされたが。
ま、キラなら大丈夫だと思うけどなと笑った姉に、笑って頷きを返したキラは、相手がアスランだということでそれを忘れた。

「ラクスを返して。ラクスだってそう言ってるはずだよ」
しかしアスランは否、と言う。
「何で!!」


「ラクスを野放しにするのは危険だからだ」


「え・・・?」
意味が分からないと言わんばかりのキラに、アスランは言う。
「ラクスの所有する力は、個人が持つには大きすぎるんだ。それは国を脅かす凶器でしかない。
だからといって下手にこちらから手を出すこともできない。どこからどんな形で反撃が返ってくるのか、
それが分からないからだ。ならばプラントに組み込めばいい」
そういうことなんだ、と当たり前のように言ったアスランを、キラは何を馬鹿なと睨みつける。
「ラクスの意志は?」
「この場合、さして重要ではない」
「な!?」
どうしてそんな他人事のように、と淡々と言葉を紡ぐアスランにカッとなる。

「重要だよ!ラクスは人間だ!人形じゃない!まだ十七歳の女の子だ!なのにこんな酷いこと・・・!!」

戦場では毅然としているラクスが泣く姿を知っている。
守ってあげなきゃ、と思わせるほど弱々しい姿を知っている。
だからこそ余計に許せないのだ。ラクスを人形のように扱う言葉を。
だが、そうして激昂するキラをアスランは冷たく見据えた。
アスランにそんな目で見られたことがないキラは、びくっと体を震わせる。

「ラクスはシーゲル・クラインの娘の名と歌姫ラクス・クラインの名を使った。そうして人材を集め、戦場へ出た。
二度目の出陣では独自でMSを開発するまでに至った。ただの女の子にそんな真似ができるか?」
「それはラクスが平和を願ったからだ!戦争を止めたいと願ったからだ!
だから怖くても辛くても平気な顔をして戦ったんだ!!」
何で君にそれが分からないの。
婚約者だったのに。キラよりずっとラクスといたのに、どうしてそんなことを言うのだ。
「平和を願うなら、戦争を止めたいと願うならただの女の子がMSを造ってもいいのか?
怖くても辛くても耐えて戦うためならば、ただの女の子が戦艦を所持していてもいいのか?
ラクスはだからこそただの女の子と見られない。ただの女の子には決してできないことをする。
それだけの『力』を持っているからだ。だから恐ろしいんだ。警戒するんだ。いつラクスの意に添わないことをして、
そうして『力』を向けられるかしれない。そう怯えるんだ」
「ラクスはそんなことしない!アスランだって知ってるでしょ!?ラクスは命を狙われたんだ!!」

だから戦場に出ざるを得なかった。
ラクスを守るために。そして状況は変わって、世界を守るために。
なのにどうしてそれが悪いと言うのだろうか。
どうしてラクスが自分の意志と違うからと言って攻撃を加える、と言うのだろうか。

キラの目に宿る怒りに、けれどアスランは冷たい目のまま微笑んだ。

「なら、その後は隠れていればよかった」
「それでラクスの命が狙われなくなるの!?」
「なら戦場に出てきてMSを破壊すれば、ラクスの命は狙われなくなるのか?」
「そうじゃない!そんなこと、言ってるんじゃない!!」
言っているだろう、と言ったアスランが、キラと優しく呼んだ。

「どうしてラクスが狙われるのか、そう聞いたな?」

再び道を違えた時、確かにキラはアスランにそう聞いた。
どうしてなのかはっきりするまではプラントを信用できないと、そう言った。
その時は何も返しはしなかったアスランは、今何を答えようというのだろうかとキラは口を閉じる。






「だからだよ」






その答えは、到底納得できるものではなかった。

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一度消えました。アップするまで気づきませんでした。確認してみれば、三話の冒頭がここに・・・(汗)。
消えた話と大した変わりはありませんが、やっぱりちょっと変わりました。
どっちがよかったろうか・・・。

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