囚われの姫君は本当に無害なのか
〜偽りを空へ、真実を地へ〜






「よかった。やっと会えた」
アレックスではなくアスランと呼んで笑うのはキラだ。
先程ラクスと共に歩いていくのを見たというのに、どうしてここにいるのだろう。
「さっき君を見かけて。ラクスがいいよって言ってくれて。僕が君と話がしたいの、知ってるから」
だからといって離れていいはずがない。キラはラクスの護衛なのだから。
それにアスランに監視がついているように、キラにもついている可能性は大きいのだ。不用意に接触するのは好ましくはない。
アスランは素早く周囲の気配を探り、それらが自分達から離れていることを確認すると、内心安堵する。
それでも油断はできない。

「俺に話があるのなら、まずは上層部を通してくれ」
そう言うと、途端にキラが拗ねたような顔になる。
「一応したよ。でも取り合ってくれなかったんだ。でもせっかくここで会えたんだよ。話くらいいいでしょ?」
「だめだ。俺の立場は分かってるだろう?ここでお前と話はできない」
「そんなのおかしいよ!少しくらいいいじゃないか」
「キラ、聞き分けろ。俺は今評議会の監視下にあるんだ。勝手なことはできない」
「話すだけなのに?」
こくんと頷く。
納得いかない。そんな顔のキラに、それでも首を横に振ると、小さく続ける。

「いいか?キラ。デュランダル議員も俺も罪を許されてこうしているわけじゃない。
こうして外に出てはいても自由は許されていない。評議会の監視下で、評議会から託された仕事をしているんだ」
それは分かってるよと、不服そうな顔でキラが言うのに頷く。
「ラクスも立場としては同じだ。評議会の監視下で評議会からの仕事をしている。お前はその護衛だ。
そんな俺達が接触することを評議会は快く思わない。無用な疑念を抱くかもしれない。何か企んでいるのではないかと。
それは歓迎できないことだ」
「何で話すだけで疑うの!僕は話がしたいだけ・・・!」
「それだけ警戒されてるってことなんだ!お前達も俺達も、理由はどうあれ結果プラントに銃を向けたことに変わりはない。
警戒されて当然だろう?」
「でも!」
「でもじゃない!分からないならそういうものなんだと覚えておけ。
お前がどう思おうと、それが今、俺達を取り巻いている事情なんだということを覚えておくんだ。
納得できなくていいから、それを踏まえて行動しろ」
いいな、とキラの両肩に手を置いて顔を覗き込めば、不服そうは顔ではあるが、キラがこくんと頷いた。
それによしと微笑んで、じゃあなと控え室に戻るために踵を返す。もうそろそろ会議が終わる時間だ。
それまでに控え室に待機しておかなくては、と時間を確認したアスランに、キラがまた声をかける。

「まって!これだけは聞かせて!」

苦い顔で、けれど足を止めて振り向けば、キラが真剣な顔でアスランを見ていた。
そして悲しそうに目を伏せて、もう一度強い視線でアスランを見る。


「あれは君の本心?」


は?とアスランが首を傾げ、何の話だ、と返す。
「僕に言ったこと。ラクスの、こと、僕に言ったでしょ?いろいろ。あれは君の本心なの?」
アスランはバイザーの下で目を大きく見開いた。

呼び止めた理由がそれを聞くことだというのなら、ああ何と愚かなことだろう。

アスランは泣き出しそうに目を細めて笑った。




「そうだよ」




言った言葉を信じてくれないのに、分かろうとしてくれないのに、君を信じてると信じさせてと言わんばかりのキラも。
もうキラ達の思いを共有する気がないのに、望みを叶えてやりたいと思いもしないのに、情が戻りそうになった自分も。

何て愚かなことだろう。




* * *


どうして、どうして、どうして。
振り向くことなく去っていくアスランに、キラは拳を握ってうつむく。

ラクスは言った。アスランはきっと分かってくれると。
キラも思っている。ちゃんと話せば分かってくれると。
なのにアスランはちゃんと話す機会もくれなかった。評議会に疑念を抱かれたくないからと拒否した。
アスランの言っていることは納得できないけれど、事実なのだろうと思う。
けれど、それならばアスランからも働きかけてほしかった。話をさせてくれと評議会に言ってほしかった。
キラとラクスだけが言ってもだめだというのなら、アスランからもその機会を求めてくれれば、もしかしたら。
それが無駄なのだと分かっていても、そんな素振りを見せてほしかった。そうしたら安心できた。

「どうして、アスラン」

アスランはもう話は終わりだと去っていった。
また機会を設けようと言ってくれなかったし、信じていいんだよねという意味を込めた言葉に否定を返した。

どうしてだろう。そればかりが頭を廻る。
一緒に戦ったのだ。一緒に平和を勝ち取ったのだ。なのにアスランはキラ達から離れていった。
終わった戦争に喜ぶ皆の中で、アスランはプラントに帰っていった。
奪われたラクスを取り戻そうとする皆の中で、アスランはラクスはプラントのものだと言った。
突然の変貌。
キラにはそうとしか見えない。

「君を・・・信じてたのに」

ずっとずっと一緒だと。
今度こそずっと一緒だと。
一緒にラクスをカガリをオーブを、そして世界の平和を守っていくのだと信じていたのに。




どうしていつもいつも、アスランはキラ達に背を向けて行ってしまうのだろう。

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全く進んでません(汗)。
ただ、もう本当にさよならなんだよとキラに知らしめただけで終わりです。

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