「約束しましょ、ハロ」
「Hello?」
「アスランの胸に飛び込むのはあたしが先よ。ハロはその次」
「Hello!」
「約束よ?」

赤いハロと指きりするのはミーアだ。
ザフトのミーア心の作戦名、『AAをどうにかしましょう作戦』の一環で今ミーアはAAにいる。捕虜として。

たとえふかふかのベッドで熟睡し、温かくも美味しい食事にありつけているのだとしても。
なおかつドアがロックされているだけで、歌うことも踊ることもできる十分な広さの部屋にいるのだとしても、立場としては捕虜だ。
まあ、その生活も今日で終わるのだが。

つい先程ミーアがキラに対しての勝利を収めたのを合図に、ザフトからAAへの攻撃が開始されるのだから。

「もうすぐアスランのところへ帰れるわよ?ハロ」
「Athrun!」
「そ、アスラン」

ミーアの大好きな人。その人の指揮の下で。




「おかえり」




「どういうことだ!?AAにはプラントでラクスを名乗ってる奴が乗ってるんだぞ!?」

カガリが叫ぶのは仕方ない。今、AAはザフトから攻撃を受けているのだから。
こちらにあちらがラクスと呼ぶ少女がいる、という言葉さえ無視された。
それでなくとも、カガリにはAAが攻撃される理由が分からない。
確かにザフトと連合の戦闘に幾度となく介入した。けれどそれは戦闘を止めるためであり、AAは常に中立を守っていた。
ザフトの敵ではないのだと、それらの行動からあちらも分かっているはずなのに。


「あちらにとって、あの方は必要ではなくなったということなのかもしれません」


「え?」
ラクスの声にカガリは振り向く。
マリューが指示を飛ばす声を聞きながら、ラクスもカガリを振り返る。
「わたくしはプラントから命を狙われました。何故わたくしは命を狙われたのでしょう」
ラクスの鋭い光を宿した目に、カガリはそれは、と口を開く。
「ラクスがいなくなれば、プラントが用意したラクスが本物になるからだろう?」
ラクスが名乗り出ることがあれば、プラントの偽りは暴かれる。
それにラクスが頷く。
「デュランダル議長にとって、思い通りに動かせるラクス・クラインは大きな武器となります」
「なのに切り捨てるのか?」
眉をしかめるカガリに、ラクスは苦い顔をする。
「先の大戦の英雄と呼ばれたAAとフリーダムが戦場に姿を現しました。中立を謳うオーブの代表たるカガリさんもまた」
真剣な顔でラクスを見るカガリに、ラクスはぐっと拳を握る。
「先の大戦の英雄と呼ばれた者ばかりが、プラントに異を唱えています。それは国民が今のプラントを疑う種となります。
そこにわたくしが現われたならば、プラントはどうなりますか?」
「どうって・・・議長を疑うな。ラクスがこちらにいると知れれば、国民はプラントで呼びかけていたラクスが偽者だと気づく」
「そうです。議長はラクス・クラインという武器を失います。そして残されるものは議長への不信です。
議長に寄り添っていたラクス・クラインが偽者であったならば、誰が彼女をラクス・クラインとしたのか。考えずとも分かりますわ」
カガリが目を見開き、まさか、と口が形作る。
ギルバート・デュランダルはプラントの民を守る指導者だ。オーブを守る指導者であるカガリには信じられない答えが頭に浮かんだ。
それを肯定するようにラクスが泣き出しそうな顔をした。


「今AAを攻撃する理由、それは一つです。議長が己の地位を守るためにはラクス・クラインが消えればよいのです。二人共」


そうすれば一人はラクス・クラインとして、もう一人は秘密裏に処理することができる。
処理、嫌な言葉だ。
うつむいたラクスにカガリが、なっと声を上げた。予想はしていても、感情はついていかない。

「だが!国民になんと説明するんだ!」
ラクスの死を。
まさかラクスが乗っていると知らずに攻撃したAAにいました、というわけではあるまい。
「何とでも。反論できる者はおりませんから」
AAが沈めば、議長がどんな嘘で固めようと誰一人真実を知ることはない。
そう言って平静を保っているが、ラクスの手が小刻みに震えている。恐怖か、それとも怒りか。
カガリは込み上げる怒りをそのままに、壁に拳を打ちつける。
「それが施政者のすることか!!」
ラクスも頷く。
民を守るために存在するというのに、己の地位のために民を殺める。
そんなことが許されていいわけがない。
そしてAAの一室に不本意だが捕虜としている少女を思う。
いまだ何も語らない少女は、おそらくデュランダルを信じているのだろう。
デュランダルに騙されているにしろいないにしろ、少女は信じている。
この攻撃すらも、自分を救うためだと信じているのかもしれない。

「あの方は被害者ですわ」

はっとカガリがラクスを見ると、ラクスは攻撃を与えてくるザフトを睨みつけていた。

「あの方は本当に楽しそうに歌を歌っていらっしゃいました。歌が本当にお好きなのでしょう。
その思いを利用されたのでしょう。わたくしと同じ声をなさっていらっしゃいます。
もしかしたらその姿も作られたものではなく、似たものであったのかもしれません。
ならばデュランダル議長にとっては幸いでしょう。思い通りに操れるラクス・クラインを手に入れられるのですから」

だからこそ、とラクスは強い調子で言葉を紡ぐ。




「デュランダル議長の思惑通りにあの方を死なせるわけには参りません」




そんなラクスをぽかんといった表情で見ていたカガリは、ラクスの言葉を脳裏に染み込ませると、強く頷いた。

「助けよう。必ず」
「はい」

二人は顔を見合わせ、微笑む。
それを戦闘指揮を取りながら聞いていたマリューが小さく微笑む。

軍に所属していた頃、上司による隠蔽はあった。無実の人間を追い落とす者もいた。
それが個人のためだけではなく、国のためであることもあった。
だからマリューはラクスとカガリの言葉を嬉しく思う。
二人もまた、国にとって重要な位置に属する人間だ。それでも彼女達はそういった行為を嫌い、切り捨てられる者を救おうとする。
それがたとえ自分の名を語った者であったとしても。
それを甘いという者もいるだろう。けれどマリューは嬉しいと、そう思うのだ。
そうして少女達の心に添うように、マリューは指示をとばした。


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アスミア再会するどころか、アスランの姿すら見えない・・・(汗)。
ミーアとアスランの再会はもうちょっとお待ち下さい。

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