おじゃまむくろ




沢田家の一人息子である綱吉は、冷たく一言言った。帰れ、と。
沢田家の新たな居候と言い張る骸は笑顔で言った。嫌です、と。

「それにアルコバレーノと君のお母様の許可はいただきましたので、君の許可は必要ありませんし」
「俺この家の人間なのに!?ってか、何考えてんだよリボーン!!」

こんなことヒバリさんにバレたらどうするんだよ!骸を天敵と言わんばかりに忌み嫌うヒバリさんに!
骸を遺伝子レベルで拒絶しているとしか思えないヒバリさんに!!もしかしたら前世からの約束かもしれない!!
本人心の叫びのつもりだろうが、全部口に出ている。それにどんな約束ですかと骸が突っ込むが聞いちゃいない。

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいヒバリさん!いくらでも謝りますから咬み殺さないで!」
いや、むしろ殺さないでとお願いしたほうがいいかも!だって事は骸のことだし!!
「…君達、どういう恋人関係築いてるんですか」
後学のためにも教えてくれますか。
それに突っ込むものは今突っ込まれる側にいるため、どこにもいなかった。

そんなやりとりから一週間。とうとうバレた。というより、バラされた。
綱吉の態度ですぐにバレると思っていた骸の沢田家居候。思いのほか綱吉ががんばった。そしてタイミングよく雲雀が忙しかった。
よし、このまま隠し通してしまおう。そう思っていた綱吉のべっこう飴より甘い考えを裏切るようにリボーンがさらりと言った。
嫌な予感はしたのだ。雲雀の肩の上でおもしれえことを教えてやる、とか言い出した瞬間、さあっと血の気が引いたのだ。

『今ツナは骸と同棲中だぞ』

語尾に星が見えた。
何言ってんのお前ーーー!!!と叫んだ綱吉ににやりと笑ったリボーンが雲雀の肩から飛び降りたのと、
雲雀がトンファーで綱吉のすぐ側の壁に穴を開けたのは同時だった。
その後どういうことかを延々説明させられ、怒られ、散々な一日を過ごしたのだ。




「骸ー、それ取って」
「これですか?」
「ありがとー」
「少しは自分で動きなさい。喰われますよ」
「何に!?」

目の前で繰り広げられる会話を雲雀は青筋を立てて眺める。
骸が沢田家に居候してから一ヶ月。雲雀がその事実を知って三週間。
初めはいちいちトンファーを振り回していたが、そのたびに綱吉の部屋が使い物にならなくなるので耐えることにした。
綱吉にわんわん泣いてお願いされたら仕方がない。嗜虐心を煽られたがとりあえず耐えた。破格な扱いだと自分でも思う。

「ねえ、赤ん坊」
「何だ?」
片膝を立ててベッドの上に座る雲雀は、寝かせた方の膝の上に座っているリボーンに声をかける。
何故その状態なのかというと、雲雀に対する抑止力の一つだ。あんまり壊れるとママンが困るからな、というのがリボーンの言だ。
俺が膝に乗せたら顎蹴り上げるくせに、という綱吉の言葉は綺麗に無視されたというのは余談だ。
とにかく雲雀の膝の上でずずっとコーヒーを飲むリボーンと、そのすぐ前でレオンと戯れる黄色い鳥。
それは小動物好きの雲雀を癒してくれるが、時折聞こえる恋人と天敵の会話にぶち壊されるので雲雀の声は少し尖っている。
「あれと群れてる三人はどうしたの」
「イタリアに置いてきたらしいぞ」
「何?あの人のところにいたの、あれ」
骸とイタリアの組み合わせといえば、雲雀にとって真っ先に浮かぶのはキャバッローネファミリー十代目ディーノだ。
ディーノはリボーンの元教え子で綱吉の兄弟子、そして認める気は砂粒ほどもないが雲雀の元家庭教師だ。
けれどそこにもう一つ、骸の恋人という肩書きがつく。

ふうん、と雲雀が頷く。何となく見えてきた。骸が可愛がっている三人を置いてまで沢田家に居候しにきた理由が。
そんな雲雀の反応にリボーンは満足そうに口元を上げる。これくらいの察しのよさが馬鹿弟子にもほしい。

「後どれくらいでこれそうなの」
「一、二週間だな」
「無能」
「同感だ」
後少なくとも一週間、雲雀は我慢しなければいけないということか。
咬み殺すを通り越して殺したい相手が目の前で恋人といちゃついている光景を!
実際は骸と綱吉の間で何やら口論が始まっているのだが、雲雀の目にはいちゃついているようにしか見えない。
大体、恋人放って変態南国果実構ってるってどういうことなの。機嫌は悪化の一途を辿る。
そのままトンファーを握らないようにリボーンを抱く手に力を込めて、ぼふっと帽子に顔を埋める。

「咬み殺す」

言うだけしかできない今が忌々しい。元凶が現れたらまとめて咬み殺そう。
雲雀とリボーンの状態を目にした綱吉はそんな雲雀の呟きも知らずに、ちょっリボーンずるっ羨ましい!!と恨めしそうにしていた。


next

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送