AAが攻撃されたのは昼食が終わった午後のことだった。
きゃっと倒れこむミーアをネオが抱きとめ、始まったなと声を洩らした。それにミーアがはっと顔を上げて、ネオの腕から飛び出し、ころころ転がっているハロを抱き上げる。そしてネオに向き直る。
「ロアノーク大佐」
「ミーアちゃんは俺と一緒にな。無事にザラに返さねえと、こっちも大事な副官返してもらえないんでね」
攻撃が始まったってことは、ネオの副官は今ザフトにいるということだ。副官がザフトにいるということは、ネオが率いていた艦もザフトにいるということだ。
ならばネオはミーアを守り抜かねばならない。無事に彼らの元に帰るために。
ミーアは分かっているのだろう。頷いて立ち上がって銃を手にするネオの側に寄った。
「ブリッジに行くんですよね?」
「ああ。あそこにはラクス・クラインがいる」
キラとカガリ、そしてバルトフェルドは外だ。突然の攻撃に応戦しているだろう。残るはブリッジクルーとラクス。
ラクスとミリアリア以外は元とはいえ軍人だ。ネオ一人では荷が重いが、とちらりとミーアを見下ろす。正確にはミーアが抱いているハロを、だが。
「それ、本当に使えるのか?」
思わず聞けば、ミーアがきょとんとした顔をして、そしてにっこりと笑った。
「お試しになられますか?」
アスランを疑うならその身をもって確かめてくださいね?という言葉が聞こえた気がした。
たらり、と汗を垂らしていると、ハロをこちらに向けて掲げようとしたので慌てて止める。
冗談ではない。あのハロはアスランがミーアをこちらに預ける前に改造したのだと聞いた。

目から光線って何。

ミーアから聞いた時には、口から機関銃じゃないだけマシなのだろうか。実はついているのだろうか。そう思いながらも突っ込めなかったが。

「殺傷力はないんですって」
痺れ薬みたいなものかしら?と首を傾げたミーアに、へ?とネオが間抜けた声を上げた。
それにミーアがくすりと笑った。
「アスランはあたしに武器を持たせたりしないもの。本当はあたしをここに置いていくのも嫌だったんだから」
安全な場所にいてほしい。それがアスランの願いだ。
アスランは守りたい人間だから。誰かを守って戦う人間だから。
「なのに何でここにきたんだ?」
「…ここはダメだから」
「駄目?」
「ここはアスランを傷つける場所だから。だからあたしがここにいたかったんです。アスランに大好きよってすぐに伝えられる場所にいたかったから」
だからきたの。
そう言うミーアの顔は、先程までの少女ではなく、女だった。








何これ、とキラが声を洩らした。
何故だ。あれはザフトの艦だ。確かミネルバ。あっちは地球連合軍の艦だ。名前は知らない。けれどオーブ軍が出撃した時、後ろについていた艦だ。
ザフトと地球連合軍。それが何故一緒にAAを攻撃してくるのだ。そして何より可笑しいのは。




「どうして君が僕らに攻撃してくるの、アスラン!!」




攻撃を仕掛けてくるインパルスを跳ね飛ばすと、すかさず攻撃を加えてくるセイバー。
どうしてだ。どうしてアスランが!
共に戦った仲間がいる艦に。幼馴染が、恋人が、元婚約者がいる艦に。そして匿ってくれと預けたミーアがいる艦に。
何故攻撃をしてくるのだ!!

「アスラン!」
「…キラ」


すまない。


俺はお前達をプラントに害なす敵と判断した。


あまりの言葉に目を見開いた時、キラ!!とミリアリアの悲鳴が聞こえた。







キラに跳ね飛ばされたはずのインパルスが近づいてくる。それを砲撃して防いでいるが、ミネルバや地球連合軍からの攻撃のせいで徐々に距離が近づいてきている。
「キラ!キラ、きて!!」
ミリアリアの悲鳴にフリーダムが戻ってこようとするがセイバーが邪魔をする。
セイバー。アスランの機体。
「ってえ!!」
マリューの声を聞きながら、ラクスはこの状況をどう切り抜けるかに頭を働かせる。度々加えられる衝撃に耐えながら、どうすればいいか。それを必死に。
なのバンッという音と同時にマリューが艦長席から落ちたのに思考を停止させた。
「マリューさん!!」
「艦長!?」
マリューに駆け寄れば、肩から流れる血が白い軍服を赤く染めていくのが目に入った。
一体何が起きた。撃たれたのだ。マリューが撃たれた。背後から。背後。
振り向く前にミリアリアが少佐!と悲鳴を上げた。少佐。少佐と呼ばれる人間は一人だ。

「フラガさん。ミーアさん」

振り向いた先、銃を構えたムウと、ハロを両手に持って立っているミーアがいた。それが意味することなどひとつだ。
AAクルー達は信じられない思いで動けず、ただムウを見ている。けれどラクスはすぐに立ち直った。立ち直ってムウを問い詰めようとして、今までで一番の衝撃に態勢を崩した。
何だ、と思うまでもない。今は戦闘中だった。インパルスが近づいてきていたのだった。ムウがマリューを撃つという思いもしなかったことに直面したせいで忘れていた。

「ミ、ミネルバから通信です」
「あちらは何と?」
「降伏するように、と」
どうしよう、という目でミリアリアがラクスを見た。ラクスは唇を噛んでムウを見る。
降伏だってさ、と笑うムウは今も銃を構えている。今度はラクスに向けて。
「した方がいいだろ?このままじゃインパルがエンジンぶっ壊すぜ?」
オーブの姫さんもそろそろ助けなきゃだろ?と言われてストライクルージュが映る画面を見上げる。そして息を呑む。
「カガリさん!」
片腕がない。
グゥルに乗ったガイアが更に攻撃を仕掛けていくのを見てラクスは叫んだ。
キラは、バルトフェルドは、見れば、キラにはセイバーが、バルトフェルドにはカオスとアビスが取りついていて助けにいけそうもない。
「どうする?歌姫サン?」
ぎり、とラクスはムウを睨みつけた。


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