可愛い妹。愛しい妹。以前と変わらず慕ってくれる大切な。
大切な、

たいせつ、な?








ルルーシュが少し出ている間に訪ねてきたシュナイゼルが、眉を寄せて睨みつけるように目の前に置かれた贈り物としか思えない箱の山を眺めている。向かいに座るナナリーも苦笑しながら眺める。
あれは全てルルーシュ宛てだ。ルルーシュの部屋に置いてあるのだから当然だが。
これらが贈られてくるようになったのは、ルルーシュが記憶を失って二ヶ月。忙しかった皇帝の望みでようやくの対面の日となった翌日からだ。シュナイゼルが迎えにきて、連れてアリエス宮を出た日の翌日。

「記憶を失ったあの子は、以前に比べれば大分柔らかい印象を受けるからね」
シュナイゼルの言葉にナナリーは頷く。
ルルーシュは純血ではないからと、多くの皇族貴族に厭われてはいるが、皇族であることに代わりなく。
そのうえ美しいと形容するにふさわしい外見を持つ。それゆえに恋人に伴侶にと人気は高いのだ。
ただ男も顔負けの能力の高さゆえに、少し可愛げに欠けるところがあった。
だがシュナイゼルの言う通り、印象が柔らかくなった今のルルーシュにはそんなところは見えない。
そのせいだろう。記憶を失っている今の内にと手を出してきたのだろう。
贈り主の中には記憶を失う前のルルーシュにとっくに振られているものもいるようだ。

「でもシュナイゼル兄様。ルルーシュお姉様、ひとつも開けていらっしゃらないんですよ」
「ひとつも、かい?」
「はい。ただシュナイゼル兄様にお見せしたほうがいいかと思って」
処分せずに置いておいてもらったんです、との言葉にシュナイゼルが思わずといったように瞬きした。
どうしてそこで自分の名前が出てくるのか、そんな顔だ。それにナナリーは笑う。
「ユフィ姉様と言ってたんです。今のお姉様は右も左も分からないでしょう?だから兄様にお任せしようって」
お姉様のことは兄様が一番ご存知でしょう?そう言えば苦笑が返る。そしてまた山と積まれた贈り物を見る。その目が自然と剣呑さを帯びることに気づいて、ナナリーが小さく笑った。

ルルーシュの同母妹であるナナリー以上にシュナイゼルはルルーシュに近い。
ナナリーはルルーシュが妹であるがために、あえて見せない部分があることを知ってる。
優しく穏やかな姉。それ以外の姉をあまり知らないが、シュナイゼルは知っている。それを悔しく思ったこともあった。
けれど気づいてしまった。シュナイゼルのルルーシュへの視線。ルルーシュのシュナイゼルへの視線。
彼らはお互いをよく知っている。それは何故か、その意味に気づいてしまった。
今だってそうだ。ルルーシュはシュナイゼルといる時が一番安心している。そして以前と同じ視線でシュナイゼルを見ている。


「兄様。お姉様はいつも兄様のことばかりです」


記憶を失う前も、失った後も。いつだって、ずっと。だから。

驚いたようにこちらを見る兄に笑いかける。





――どうか気づいて、兄様。



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