ユーフェミアに連れ出された庭で、何故か一人たたずんでいる。
一体あの子はどこに行ったのやら。思わずため息。
ルルーシュと仲のいいユーフェミアのことだ。ルルーシュの元を訪れなくなったシュナイゼルにその訳を聞くなり怒るなりするのだろうと思っていた。
思っていながら誘いに応じたのは、結局のところ会っていないルルーシュの様子が気になったからだ。
ユーフェミアからルルーシュの様子を聞くことができるから、シュナイゼルは今ここにいる。

会いに行けばいいのに。
それほどに知りたいと思うのならば会いに行けばいい。
けれどそれはできない。またルルーシュが目を合わせなかったら、と思えば行けない。行きたくない。
そんな臆病なことを思う自分の気持ちがどこからきているのか。流石にシュナイゼルも認めざるを得なかった。ナナリーの言葉。コーネリアの言葉。それらを鑑みるに間違いない。


ルルーシュが好きだ。


妹としてではない。女として好きなのだ。
どうしてそれに今まで気づかなかったのか。違う。気づこうとしなかったのか。それも分かっている。当たり前だったからだ。
ルルーシュはいつでもシュナイゼルを見ていた。シュナイゼルにしか見せない表情があった。シュナイゼルにしか向けない視線があった。それが当たり前だったから。失われることなどないと思っていたから。
恐らくは、ルルーシュが妹でなければ気づいた。妹であったから気づかなかった。
半分とはいえ血が繋がった兄妹。親しんでいる妹。繋がりは消えない。他の関係など築かなくともこの手から離れたりなどしない。

愚かだ。

今のルルーシュは以前のようにシュナイゼルにだけ向けていたものを向けない。当然だ。知らないのだから。
ルルーシュが向けてくれていた想いが何なのか、気づくべきだった。それを甘受していた自分の想いに気づくべきだった。そうであれば記憶を失ったルルーシュに触れられた。愛していると囁けた。今のように戸惑い、恐れ、挙句に視線を避けられる。そんな事態になどならなかった。

遅かった。気づくのが遅かった。
今のルルーシュに初めて会った時、言ってしまった。兄と呼んでくれと。だからルルーシュはシュナイゼルを兄として見る。男としてなど見てはくれない。
今更愛しているなどと、男として女であるルルーシュを愛してるなどと、どうして言えるだろう。兄に愛を囁かれた妹は、どう思うだろうか。

『あの子は兄上のものです。兄上があの子のものであるのと同様に』
コーネリアはそう言うけれど。
『兄様が気づいていらっしゃらないだけで、お姉様は記憶を失ってもずっとずっと兄様だけなんです!』
ナナリーはそう言うけれど。
思い出すのはこちらを見ようとしない紫の目なのだ。

ふ、と自嘲して、視線を彷徨わせてユーフェミアを探す。
これ以上考えても同じこと。結局は想いを認めても逃げるだけ。それでいい。
そう、思ったというのに。


「殿下?」


聞いた声。
思わず視線をやれば、皇帝の騎士であるラウンズスリー、ジノがいた。手綱を握って馬を歩かせている彼は前に女性を乗せている。黒髪の女性。
小さく微笑んで首を振るその姿に、シュナイゼルは目を見開く。頭が真っ白になる。何とか喉から出した声は擦れていて。




「ルルーシュ?」




たくさんの贈り物。数え切れない求愛者。その中にジノは入っていただろうか。シュナイゼルが知る限りでは入っていなかったが、ルルーシュを避けていた間に求愛者の一人となったのだろうか。そしてその求愛をルルーシュが受け入れたのだろうか。
分からない。避けていたから。逃げていたから。だからこんな大切なことが分からない。

顔を歪める。
逃げるだけでいい、なんて。








どの口が言ったのだろうか。








気づけば側に立って、おいでとその腕を引いていた。



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