ねえ、シュナイゼルお兄様。当たり前が当たり前じゃなくなったの。お兄様にとっての当たり前はなくなったの。だからお兄様は余計にご自分に目隠ししてらっしゃるんだわ。

そう心の内でシュナイゼルに語りかける。
あんなに頭がいいのに。あんなにもてるのに。恋人だっていたのに。
仕方のないお兄様、なんてため息をつく日がくるなんて思ったこともなかった。




チチチチチ、ピピピピピ。
そんな鳥の囀りの中、ジノは何故か第三皇女と第四皇女と一緒に馬に乗って散歩なるものをすることになった。何故に。
未だにジノは理由が分かっていないのだが、と隣に立つスザクを見下ろす。が、スザクは無表情だ。目は遠いところを見ている。
「ス、スザク?」
何だその顔。
そんなジノに、言っておくけど、とスザクがちらりとジノを見上げた。

「ユフィはたまに突拍子もないことをするけど、そういう時は止めても聞かないから」

ユーフェミアがそういった行動に出る時は、ユーフェミアの中で確固たるものがある時だ。だから反対するよりも側にいた方がいい。反対して目の届かないところで何かをやらかされるより、幾分もましだからだ。
悟ったように言うスザクに、ジノは苦労してるんだな、スザク、と同情の視線を送った。
そしてユーフェミアに視線を戻すと、ユーフェミアは姉であるルルーシュの腕を抱いて、何やら楽しそうに話している。ルルーシュはそれに微笑んで頷く。…仲のいい姉妹だ。しかも美人姉妹なので目の保養にもなる。
あの皇帝陛下からどうやってこんな美人な子供が生まれるのだろう。そういえば第一皇女も第二皇女も美人だ。男ではあるが第二皇子や第三皇子も美人だ。これは母親の遺伝子の成せる業なのだろうか。それとも実は皇帝陛下も美人なのだろうか。
………まあ、想像力というものには限界というものがあるからして。
ぶんぶんと頭を振ったジノを見るスザクの目が冷たい。
そんな二人にユーフェミアがスザク、ジノ、と呼んで、ルルーシュの背中を押すと、にっこりと笑った。

「ルルーシュのことお願いね」

これから乗る馬のことなのだろうが、ルルーシュが訝しげに眉を寄せた。
「何を考えてるんだ?ユフィ」
さっきまで笑って話をしていたルルーシュが今の行動のどこに何を、と邪推するようなことがあったのだろうか。
けれどユーフェミアが真剣な顔でルルーシュの手を両手で握った。

「あのね、ルルーシュ。もうこうなったら実力行使しかないと思うの」
「は?」
「話をしようにも相手は逃げてるのよ。なら引きずり出すしかないでしょう?」
何の話、とジノがスザクを見れば、スザクも分からないらしい。首を傾げた。だがルルーシュには分かったらしい。だが、ユフィ、と及び腰だ。
「お姉様も発破かけてくださったみたいだから、きっと大丈夫よ!」
ね?と笑顔を見せるユーフェミアをルルーシュはじっと見ている。何かを見定めるようにも、何かを考えているようにも見える。
姉妹だけに通じる話を聞かされたジノは、とりあえずその誰かを引きずり出すための協力に借り出されたのだな、ということだけ分かった。詳しい話は尋ねれば教えてくれるかもしれないが、相手は皇族。口を出すことはあまり好ましくないだろう。 スザクのように、ユフィと呼べるほどに親しければ別だろうが。
そうしてルルーシュが頷いた。
「分かった。がんばってみる」
何を。
心で呟いた男二人は、訳の分からないまま顔を見合わせ、肩をすくめた。



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