ネオに言われて、スティングとアウルの三人でアプリリウスに行った。そこで目が合ったのが初め。
遠く離れていたし、アスランはバイザーをかけていたため確証はない。それでも確かに合ったのだとステラは知っている。理屈ではないのだ。
アウルが思い込みじゃねえの、とステラをからかう。

次は奪取したガイアの中で。
強かった。
ステラは新型のGでアスランは量産型のザクだったというのに、ステラは気を抜けば負けるのだと思った。
どうしてそのザクがアスランだと思うんだとスティングが言うので、アスランだもんと返す。
そう、これも理屈じゃない。分かるのだ。
そしてまたアウルに、そこまでいったら電波だぞ、と大笑いされた。
電波?と首を傾げたが、ネオにステラとアスランは運命の相手だってことだなと言われて、うん!と喜んだ。

運命、運命、と繰り返しながらアスランが待つ部屋へと向かうステラの後ろで、いい年したおっさんが運命とか言うなってのとアウルとスティングの呆れた声がした。


わたしのあなた。


ふわっとした感覚と同時に目を開ける。
ぼおっとした頭で瞬きをし、寝転んだまま首を傾げる。

足りない。

そう思ってステラはゆっくりと起き上がって、じーっとベッドの空いている場所を見る。
足りない。何が足りない?

「……いない」

白いシーツに散らばる夜空の色。宇宙の色。
ステラは首をめぐらせ、その色を探すが見つからない。

「あすらん?」

舌っ足らずに呼べば、いつだって返ってきた声が聞こえない。
しんっと静まり返った部屋は声だけではなく、他の何の音も返してはくれない。

「…っ!」

ステラの顔が歪み、両手がベッドのシーツを握って皺を作る。

ガーティ・ルーを追ってきたザフト艦と戦って、そこでステラが連れてきたアスラン。
そのアスランとずっと一緒にいられるようにしてくれたのはネオだ。
ずっとずっと一緒に、と。
なのに。




今ここにアスランがいない。




「いや!」

バッとベッドから降り、ドアを開けて走る。
どこへなど知らない。
走って走って走ってアスランを探す。
アスラン、アスラン、アスラン、と心で呼びながら、零れる涙もそのままに。

アスランがいないのはいや。
ステラの部屋でいつも笑って、そして抱きしめてくれないといや。

「…っ、らん。アスラン!!」




「ステラ」




探していた声に呼ばれた、と足と止めるが、体がその急停止についていけずバランスを崩す。
あ、と思った時には、ステラは誰かの腕の中にいた。

「大丈夫か?ステラ」

顔を上げると、葉っぱの色の目がステラを見ていた。

「どうした?どこか痛いのか?」

小さく首を傾げるのに合わせて、さらっと落ちる宇宙の色。

「アスラン」
「ああ」

探して探して探して。
返ってこなかった応えが返ってきて。
ステラは涙を流したまま微笑むと、アスランの首に抱きつく。

「アスラン、いたの」
「え?」
「いなかったから、ステラ」
探したの、と言えば、ごめんと抱きしめられる。

ホッとする。
ああ、よかった。

「ステラ、寝てたから」
すぐ帰るつもりだったんだというアスランに、どこ?と抱きついたままで聞く。
「定期検査。いつも行ってただろう?」

そういえば、ステラとずっと一緒にいるために必要だから、とネオが言っていた。
いつもステラも一緒に行っていた。アスランが検査を終えるまで、膝を抱えて待っていた。
けれど、アスランが定期検査に行っていたのだとしても、ステラはだめ、と思う。
ステラを一人にしたからではない。アスランがステラのところにいなかったからだ。
アスランはステラじゃない誰かといた。それは絶対にだめだ。

「一人は、だめ」
「ごめん」

顔を上げてアスランを見上げる。




「ステラの、だから、一人はだめ」




アスランはステラの、ステラだけのアスランなのだから。




そっと口づければ、ごめんと三度返される。
そしてステラの膝に腕を回し、アスランはステラを抱き上げる。

「靴は?ステラ」
「しらない」

ずっとぺたぺた音がしていたような気がする。
きっとベッドから降りた時から履いていないのだ。

「足、汚れてる。洗おうか」
「アスランも」
「うん?」
「一緒ね?」
「うん」

ステラはアスランを囲むように歩いていた軍人達の存在に気づきもせずに。
アスランは自分を先導していた軍人達の存在を忘れて。
そうして二人、自室へと帰っていった。


end

独占欲…じゃないっぽいですか?
独占欲のつもりで書いてたんですが、書き終わったら何か違うような気も(汗)。
定期検査はあれです。記憶操作。
そして軍人の代わりにネオがアスラン連れて歩いてたはずなんですが、出番が…。

リクエスト、ありがとうございました。

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