内なる声は憎悪。


ラスティが死んだという実感は、実は持っていなかった。
あまりの突然の別れ。そして思ってもみなかったキラとの再会。キラと戦って、戦って、戦って。
どうして。どうして。どうすれば。頭の中はいつもぐちゃぐちゃで。
そのせいだろうか。ラスティがもういないことは分かっていた。死んだことも分かっていた。ただ、実感が伴っていなかった。

『誕生日おめでとう、アスラン』

人のパソコンに勝手に入れていたらしいラスティからの誕生祝いの言葉。
それを聞いてようやく実感して。なのに同時に癒されて。

ラスティはもういない。でも大丈夫。一緒に過ごした思い出がある。与えてくれた言葉がある。
辛くても苦しくても、俺は大丈夫。


…そう思えたのに、夢を見た。


G強奪任務。
撃って撃たれて撃って。
連合兵に声をかけた誰か。
振り向いた連合兵が、狙っていたザフト兵を撃った。
連合兵の側に降り立った誰か。
別方向からの銃弾にラスティが撃たれた。
激情のままナイフを持って連合兵に切りかかる。
それを庇う誰か。


目を覚ました瞬間、自分の心に渦巻いた感情は憎悪。
だめだと繰り返す。違うと繰り返す。そんなことを思ってはいけないのだと繰り返す。
なのに心の中で自分が呟く。

連合兵が撃たれようとしていた。それが為しえていれば、もしかしたら連合兵を撃った後、ラスティを狙っていた相手を続けて撃っていたかもしれない。
もしかしたらラスティを狙っていた連合兵は、撃たれた連合兵に気を取られて、ラスティを撃つことはなかったかもしれない。

馬鹿な!何故そんなことを考える!
そう否定して。なのに憎しみに駆られた自分は叫ぶのだ。

それを邪魔したのは誰だ!中立の国に住んでいながら!コーディネーターでありながら!
連合兵を助けたのは誰だ!ザフト兵が撃たれた原因は誰だ!
その誰かさえいなければ、ラスティは今も生きて笑っていたかもしれないのに!

やめろ!やめろやめろやめろ!
聞きたくないと耳を塞ぐ。けれど当然、聞こえてくる声はなおも言い募る。

どうして死ぬはずの彼女が生きている!
どうして邪魔をしたあいつが笑っている!

否定して否定して否定して。
それでも脳裏に浮かんでくる二人の姿。朧な姿がだんだんと鮮明になる。
いやだ、やめろ!
叫ぶのに、その姿が誰なのか。それがはっきりと認識できて。今、同じ艦にいる二人なのだと認識できて。

「い、やだ…っ」


マリュー・ラミアスとキラ・ヤマト。


「そんな、ふうに…思いたく、ない…っ」

優しく微笑みかけてくるマリュー・ラミアス。嬉しそうに笑いかけてくるキラ・ヤマト。
なあ、彼女達はラスティを殺したも同然だと思わないか?
そんな声が、先程の激情が嘘のように優しく囁く。




なあ、憎いだろう?




「違う…っ!!」

ラスティの仇を、今ならとれる。彼女達が油断している今なら、簡単に。

脳裏に浮かぶ姿。夕日色の髪と空色の目の彼の姿を使って、己の憎悪が甘く優しく囁く。









ナァ、ニクイダロウ?









声にならない悲鳴を上げた。

end

リクエスト「アスラン誕生日企画第1段の続編でアンチAA」でした。
あの後のもしもアスランが負の感情を抱いたら、なIFワールドでお送りしました。
アンチっていうか、アスランいじめな気がしますが(汗)。

リクエスト、ありがとうございました!

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