将来設計をたてましょう。




「うちの親父はザラ委員長が大好きだ!!」


「・・・・・何?突然」
突然拳を握りしめ立ち上がったラスティを、きょとんとした顔でアスランが見上げた。
今さっきまで二人で雑誌を眺めていたはずだ。その雑誌にアスランの父であるパトリックが写っていたわけでも、
ラスティの父であるジェレミーが写っていたわけでもない。そのため、話の流れが掴めない。
「寝ても覚めてもザラ委員長ザラ委員長な親父だった。親父との幼少時の思い出の大半はそれだ」
「へ、へえ〜」
息子として父がそれほど慕われていることは嬉しいが、どうしてだろう。複雑だ。
というよりも、他人の家庭に影響を与えているあたり、微かな罪悪感を覚えざるを得ない。
そんなアスランの隣でラスティは遠い目で天井を見上げると、ふっと切なげに微笑んだ。
「親子だもんな、好みも合うよなあ。俺の将来あれかなあ」
何か微妙だよなと呟くラスティに、アスランは眉を寄せて首を傾げる。
「ラスティ?」
ラスティの視線がアスランに落ちる。しばらくその空色の目と見つめ合っていると、ラスティがだよなあとまた呟いた。
「外見はおふくろさん、中身は親父さん似だし。ってことは、だ。マジ俺親父と好み一緒だ」
「は?」
「俺も絶対アスランアスラン言う自信あるしなあ。ああなる可能性高いよな」
うんうん、と頷いて、ハッとした顔をする。
「実は離婚の原因って、考え方云々の前にそれだったりして・・・って笑えない!ありえる!あ、ってことは俺も気をつけないとそうなるってことか!」
うーわー、と頭を抱えてアスランの隣に腰かけなおすと、そのままベッドに突っ伏した。
そんなラスティを視線で追いながら、アスランの頭には「?」が津波のように押し寄せていた。

意味がさっぱり分からない。

そんなアスランをちらっと見て、ラスティはかわいいし、と呟きながら目を閉じた。


* * *


親父に折り入って話がある、と息子の珍しい真剣な顔にジェレミーは緊張する。
突然の通信、突然の面会希望。めったにないどころか初めてだ。月に一度ぐらいはメールが届くが、
それは近況報告といった感じで、決して会いたいや声が聞きたいといったものではなかった。
悩み相談といったものも受けた記憶はない。だからこそ緊張した。

目の前の息子はザフトに入隊し、栄えある赤を拝領した。それだけでも自慢になるというのに、
あのパトリック・ザラの息子と親友と呼ぶ仲になっているという。
パトリックを慕っているジェレミーにすれば、よくやったと大声で叫びたいくらいだ。
息子に言わせれば「信仰っていうか、崇拝してるよな、親父」だそうだが。
そんな息子は普段のおちゃらけた態度を一変させ、実はと口を開いた。


「アスランどうやったら嫁にもらえると思う?」


「・・・・・・・は?」


「何かさあ、よっく考えてみたんだよな。俺、このままだと親父と同じ道一直線だしさ。
結婚しても絶対アスランアスラン言ってると思うんだよ、親父みたく」
子供心にそんなに好きか、ザラ委員長とか思ってたし。親父との思い出振り返ったら、どれもこれもザラ委員長について熱弁してるし。
そんな息子の言葉に己を振り返ってみると、確かに自分の記憶の中にもそれがくっきりと浮かんでくる。
幼い姿の息子が暇そうにジェレミーの膝に体を寝かせて、ふうん、へえ、すごいねえと相槌を打っている。
その手にはどこから手に入れたのだったか、ルービックキューブ。

「でさ、このままじゃヤバイと思ったんだよ」
「ヤバイ?」
繰り返したジェレミーに息子が頷く。
「奥さんがそれに耐えてくれると思う?」
「・・・・・・・」
「自分以外の、しかも男のことばっか話す旦那にいつまでも耐えられる奥さんって、早々いないっしょ?」
「・・・・・・・」

これは責められているのだろうか。
これは親父とおふくろの離婚の原因って絶対それだって、と暗に言っているのだろうか。
ナチュラルに対しての考え方の違いが離婚の原因だ。
だが、そう言われてみれば時々、ザラ委員長のことばっかりね、と睨まれたこともあったような・・・。

「で、思ったんだよね、俺」
「な、何をだ?」
息子は父親の思考に気づかず、爆弾発言をしてみせた。


「アスラン嫁にもらったら何の問題もないじゃんって」


「・・・・・・・はあ!?」
「アスランアスラン言っててもさ、奥さんアスランなんだから全然大丈夫っしょ?
なら離婚原因にだってなんないし、俺も心置きなくアスランアスラン言ってられるし。
だからさ、親父何かない?アスラン嫁にもらえるような考え」
「ラ、ラスティ。ちょっと待ちなさい」
「うん?」
ジェレミーが片手で頭を押さえ、もう片手を立てて息子を止めると、息子は何?と首を傾げた。

何だその何でもない顔はと思う。今自分がどれほどの爆弾発言をしたと思っているのか。
大体だ、アスラン・ザラにはラクス・クラインという将来を約束された相手がいるのだ。
それはプラント中に祝福された関係で、お前の入る余地はないだろうが。
そもそも親友という地位を確立しているのだから、それで満足すればいいだろう?
将来の伴侶のことを思っての発言ならラスティ、お前が気をつける努力をすればいいのではないのか。
いや、それよりもだ。アスラン・ザラは男だ。お前も男だ。婚姻制度を設けている理由は何なのか考えてみろ。
男同士だからというよりもだ、出生率に悩む我々が更に減少させる行為を許すはずがないだろう。

延々と頭で繰り返し、ジェレミーはよしと顔を上げる。
父親としてではない。最高評議会議員として、プラント市民として、コーディネーターとして許すわけにはいかない。

「ラスティ」
「アスラン嫁にもらったらさ、親父。ザラ委員長と親戚だぜ?」
ジェレミーの口が開かれたまま止まった。
「孫でも生まれたら二人そろっておじいちゃんだ。ザラ委員長と孫について語り合えるんだぜ?おいしくない?」
実においしい!!
心がそう叫んだ瞬間、ジェレミーは男同士で子供はできないという事実を忘れ、立ち上がった。




「ラスティ!可愛い息子のためだ、協力しよう!」
「さっすが親父!」




がしっと父子、手を握り合う。
そして二人は笑った。自分達の未来のために。


* * *


「アホだな」
「え?」
ミゲルの声にアスランが振り返る。
「将来の心配した方がいいぞ、アスラン」
「は?」
用があってやってきたアスランとラスティの部屋で、ミゲルはベッドに座って雑誌を読んでいるアスランの頭を撫でる。
ムッとしたようなアスランから、画面越しに父親と何やら必死な顔で話し合っているラスティに視線を移す。
それにつられて視線を移したアスランが、どこか嬉しそうに微笑みを浮かべる。
「前の休暇に会いに行ったらしくて、それからよくああやって話してるんだ。何話してるのかはよく分からないんだが、
楽しそうだし見てて嬉しい」
「・・・お前の貞操かかってんのにか?」
「は?」
ぽんぽんとアスランの頭を叩くと、ミゲルははあっとため息をつく。

アスランを嫁にもらう方法。
父親と何話してきたんだ?と好奇心から聞いた自分に返された言葉。聞くんじゃなかったと固まった。
どうやらラスティとジェレミーは本気で考えているようで、目に冗談の欠片もなかった。
アスランとパトリックもよく似ているというが、ラスティとジェレミーもよく似ていると思う。
そんなにザラ父子が好きか、とミゲルは不憫そうにアスランを見下ろすが、アスランは嬉しそうにラスティを見ている。
それを見ていると、まあいいかと思ってしまう。

「まあ、ラスティぐらいだしな。お前の面倒しっかりみれんの」

優秀で真面目で頑固で不器用なアスラン・ザラ。
ついでにどうやら人見知りの気もあるらしく、人を見下しているだのと誤解を受けることもある。
そのアスランと周りを上手く取り成すのはアカデミー時代からラスティの役目で。
だからまあ、応援はしないが黙って見守るくらいはしてやろうと思う。

「だからアスランがんばれな〜」
「ミゲル、今日何かおかしいぞ?」

アスランの頭をくしゃくしゃと撫でて笑う。







『よし!行け、ラスティ!』
「じゃ、親父。結果を楽しみに待っててくれ!」

そんな会話が交わされたその日、果たしてラスティとジェレミーの悲願が達成されたかどうか。
それは彼らしか知らない。

end

リクエスト『ラスアス』でした。
馬鹿話ですいません(汗)。しかもラスアス?ラス→アスな気が・・・。
ラスティ父は離婚の原因とパトリック大好きなことしか知らないんで、思いっきり性格と口調は捏造です。

リクエスト、ありがとうございました。

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