無関係だと主張したいのにできない俺は正しいと思います。




「ちょっと、君。あれどういうこと」

背後からの声と共に、首にトンファーがかけられた。
びしっと真っ直ぐに伸ばした背筋に悪寒が走る。
「な、何のお話でしょうか?」
震える声で聞けば、再び背後から静かな、けれど明らかに殺気が含まれた声が耳元に届く。
「あれ、君じゃないの?」
「へ?」
ギギギと音を立てて振り向くと、並盛中学校三年生に籍を置く風紀委員長があれ、と首で示した。
再びギギギと音を立ててそちらを向いて…固まった。

「きゃんきゃん!」
「ああ、こら。それは蹴るんですよ」
「……馬鹿犬」

ごしごしと目を擦る。ありえないものを見た。

「何してるの」
「いえ、何か幻覚見たみたいで」

「骸さん、とれましたー!」
「よくやりましたね、犬。さ、千種。返してきて下さい」
「はい、骸さま」

う〜、と両手で耳を軽く叩く。ありえない名前を聞いた。

「今度はなに」
「いえ、幻聴が…」
耳おかしいのかな、と呟けば、ふうんと雲雀さんがトンファーを引いた。
「君じゃないらしいね。何だ。可笑しなことが起こると大抵君が関わってるから、てっきりあれもそうかと思ったんだけど」
何の濡れ衣!!と言えない辺りが悲しい。
「ああ、そうだ。言っとくけど、あれ、現実だから」
「そんなはずありません!幻です!」
そうだと言って下さい!と涙目で訴えれば、雲雀さんが見下ろしてきた。

「僕が嘘ついてるって言うの?」

「ごめんなさい!見えます聞こえます現実です!!」
どれほど信じたくなくても、殴られずにすむなら信じる。雲雀さんの殴るは半端じゃない。下手をしたら三途の川を見るのだ。
だからすぐに頭を下げて謝る。

「きゃああああああ!!」

「え?なに?」
突然の黄色い声に怯えながら雲雀さんを見上げる。
振り向いて確かめないのは、信じたくないものをせめて見ないようにという意志が働いたからだ。
雲雀さんは眉間に皺を寄せて、黄色い声の方を見ている。
「ひ、雲雀さん?」
「並盛の風紀が乱れる」
「へ?」
「でもいくら噛み殺しても原因を排除しないとどうにもならないと思って、原因を排除しにきたんだけど」
雲雀さんが見下ろしてくるのにびくっと震える。

それってあれですか。俺が原因だと思ってて、俺を排除しようと思ってて?

サアアーーーッッッと血の気が引く。
声も無く真っ青の顔で必死に首を横に振ると、がしっと頭を鷲掴みにされる。
「分かってるから少しは落ち着きなよ。目にうるさい」
ナンデスカソレ!!!
雲雀さんはもういい、と言って、鷲掴みにした頭を無理やり振り向かせる。
見たくなかった見たくなかった見たくなかったあああ!!!
そう思いながら信じたくないものを目に映して、また固まる。

「ひ、雲雀さん。あれ、なんですか?」
「君には何に見えるの」
「骸が笑顔満面で女の子達に手を振ってます」
「ワオ、奇遇だね。僕にもそう見えるよ」
「あの、千種と犬が骸に向かって紙吹雪降りかけてませんか」
「降りかけてるね。校庭が汚れた」
「あ、あの、なにす・・・わあああ!!!」

ブンッと耳元で音がしたと同時に、黒い物体が骸の頭にヒットした。
きゃああっと叫ぶ女の子達に、骸は頭から血を流しながら微笑んで大丈夫ですよ的なことを言っているようだ。
千種が骸の血を吹いて、犬が何やら叫ぶ中、雲雀さんのトンファーが戻ってきた。
なにブーメランなのそれ。とトンファーを目で追うと、雲雀さんの手が小さく動いた。
よくよく目を凝らすと、その手とトンファーを繋ぐものが見える。
「く、さり?」
トンファーがその細い鎖を呑み込みながら戻ってきてる。
え、なにそれ。どういう仕組み?どうやってそんな長い鎖入ってんの。てか、そのトンファー凶暴性増してませんか!?
だらだらと冷や汗をかく俺の前で、戻ってきたトンファーを軽々と受け止めた雲雀さんの口元が歪んだ。

「もう原因とかいいよ。原因よりまずは目先の不愉快な物体を処理するほうが重要だしね」
「そ、そうですか」
「うん。ということで、君は責任持ってあいつらが校舎傷つけないように頑張って」
「は!?」
「分かってると思うけど、少しでも傷つけてごらん。咬み殺すよ?」
「うそおおおおおおおおお!!!!!」

何で俺?何で俺えええ!?と叫ぶ俺の声と共に、雲雀さんが地を蹴った。
待ち構えるのは三叉槍を構えた骸と側に控える千種と犬。
骸に黄色い声を上げていた女の子達は雲雀さんを見るなり散っていったけど、それでも遠巻きに眺めている。
それを視界に、俺は雲雀さんに咬み殺されないように必死で校舎へと走った。

「絶対無理いいいいいい!!!!!」

雲雀さんのトンファーと骸の三叉槍がガキィィンッと音をたてた。


end

何しにきたんだ、骸。

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