守られて、守って。
差し伸べた手を取ってほしかった。
いつも。
いつだって。
俺に、守らせてほしかった。
「大丈夫ですか?まだ痛みますか?」
「…メイリン」
差し伸べた手を取ってくれたのはメイリン。
でも俺は、メイリンに守られている。いつもそう思う。
守りたい、のに。
守りたい…のに。
「難しいことは考えちゃダメですよ?」
「え?」
「怪我の治りが遅くなっちゃいますから、楽しいこと考えましょう?」
メイリンが笑った。心が温かくなる。
ほら、また。
「メイリン」
「はい」
嬉しそうに答えてくれるメイリンは、いつも手の届くところにいてくれる。
手を伸ばせば、ためらいなく掴んでくれる。
また、守られる。
手を差し伸べるのは、守りたいから。
なのに手を差し伸べて、その手を掴んでくれたら俺の方が守られる。
俺が、守られるのだ。
「ありがとう、メイリン」
掴んでくれて。
守ってくれて。
でも、やっぱり守りたい。
「私も、ありがとうございます。アスランさん」
頼ってくれて。
支えにしてくれて。
側にいてくれて。
そう言って、メイリンは笑う。
守ってくれてありがとう、と。
ああ、また守られた。
目を閉じる。
温かい心の中、置き去りにした雨の音を聞く。
差し伸べた手。
差し伸べられた手。
取ってもらえなかった、二つの手。
「俺は、どうしたかったのかな」
無理やり連れて逃げなかったのは、拒絶が怖かったから。
守ってくれなくていいと、言われたようで。
「ひどい、な」
臆病だ。
ミーアは、泣いていたのに。
「メイリン」
「はい?」
掴めなかった手を、今度は掴めるだろうか。
メイリンを見上げると、メイリンが微笑んだ。
ああ。
なら、もう一度
手を、伸ばしに行こう。
* * *
「まずは傷を治すことが第一ですからね!」
ミーアさんの手を掴みに行きたい。
そう言うアスランさんにそう言えば、微笑みが返った。
「ああ」
強い人だって思ってた。凄い人だって思ってた。
でもとても弱い人。とても脆い人。
守ってほしい、じゃない。守りたい。
そう思うようになったのは、つい最近。
「じゃあまずは、しっかりとご飯食べて、しっかりと寝てくださいね」
仕事はダメです。MSの整備なら私、手伝いますから、アスランさんはダメです。
そう言えば、え、という顔をされた。
無茶を無茶とも思わずしてしまう人。
それをやりこなしてしまうから、本当に厄介な人。
だからうるさいぐらいに口を出すことに決めた。
それが私がアスランさんにできること。
「いいですか?ミーアさんを助けるには、アスランさんが元気じゃないとできません。
途中で傷が開いたらどうするんですか」
う、とアスランさんの顔が歪んだ。
子供みたいに拗ねた顔を逸らして、分かったと頷くのが可愛い。
「分かったら、はい、寝てください」
アスランさんを寝かせて、シーツを肩までかぶせる。
ありがとう、とお礼を言われて、いいえと笑う。
そして少し悩んで手を握る。
「メイリン?」
不思議そうな顔。
でもどこかホッとしたように見えたから、ぎゅっと力を入れる。
「ここに、います」
アスランさんに守られて、今ここにいる。
知ってる人なんて誰もいない。
ついさっきまで戦っていた人ばっかりの場所。
でもここを追い出されたら、もう行くところがどこにもなくて。
それが怖くて、怖くて、怖くて。
でもアスランさんが、ずっと気にかけてくれてるから。
私が世話を焼くのを許してくれるから。
だからせめて守れる範囲は、私に守らせてくださいね。
「おやすみなさい」
アスランさんが笑って、ぎゅうっと手を握ってくれて、おやすみ、と囁いた。
end
リクエスト「メイアス」でした。
アスランもメイリンもお互いの存在に支えられ、守られてるんですが、
アスランよりもメイリンの方がしっかりしてました、な話。ではありませんが、そう見えたらいいなあと思います。
リクエスト、ありがとうございました!
|