「ありがとうございます、骸さま」
「骸さん、ありがとうれす!」
「ありがとう、骸さま」

三人の部下の前で、骸はきょとんと珍しくも幼い表情をした。




Anniversario




千種と犬が飾りつけをした内装はいいと思う。
クローム手作りの夕食も美味しかった。
けれど問題は、自分の頭の上に乗っている花輪と両手をふさぐ花束だ。意味が分からない。
そんな骸に、心得たように千種が言った。

「今日は記念日です」
「記念日?何のです?」
犬が手を挙げて答える。
「俺らのれす!」
「いまいち要領を得ませんね」
眉を寄せれば、クロームがこて、と首を傾けた。
「”出会いに乾杯”って、ボスの家庭教師が」
「は?」

脳裏に過ぎる黒衣の赤ん坊。マフィア界で名を馳せるヒットマン、リボーン。
どうしてここに彼が出てくるのか。ますます眉を寄せた骸に、クロームが告白する。

「三日前、会って。記念日は大切だって言われたの。
私はしたことないからよく分からなくて、そうしたらなら出会ったことに感謝する日を作ればいいって」
「こいつがうるせーから、することにしてやったんれす!」
「一番楽しみにしてたくせに」
ぼそっと呟かれた言葉に犬が噛みつくが、千種はさらりと無視して眼鏡を上げる。
「俺達はみんな骸さまと一緒にいられる今が大切です。だから骸さまへの感謝を形にする記念日を作ることにしたんです」
「作ることにしたって…」
予想外のことにぽかんとする骸に、三人がそれぞれの笑顔を見せた。


「これからも骸さまのお役に立つために」
「骸さんの側にいるために」
「よりいっそうの感謝を骸さまに」


かああっと真っ赤になった顔を隠すために俯いた骸は、どうしてくれるんですかと心で叫んだ。
ただの玩具なのに。ただの器なのに。それを承知しているくせに、骸への好意を隠そうとしない三人
それをぶつけられる骸は、冷たい闇の中にいた自分に光が差し込んでくるのを感じる。
好ましい好ましくない。そんなことを考えるけれど、厭ってはいないことだけが分かる。
ああ、ああ、ああ。こんなつもりじゃなかったのに!!


「当然です。君達は僕のモノなんですから」


何とか平静を装って口にした言葉に、三人がはい!と嬉しそうにしたのが何ともいえない温かさを感じさせた。




大切なものなんてない。大切なものなんていらない。
いるのは自分に必要な駒だけ。それだけあればいい。

それは今も変わらない。だからもうこれは自分の中では不変のものなのだろう。
だから、どんなに温かさを感じても彼らは駒。それ以下でもそれ以上でもない。


――重要な玩具。重要な器。失くせない、駒。

end

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