慟哭、憎悪、敵意。
歓喜、感謝、好意。

最近は前者の感情を主に受けることになった連合。逆にザフトは後者だ。
世界は徐々にザフトへと傾いてきている。
そんな中、AAはやはり変わらず、オーブ代表の名の元に連合とザフトの戦闘停止を呼びかける。

オーブは連合と同盟を結んでいる。いまや負の感情を向けられる連合と。
同盟はオーブ代表の承認なくして結べないもの。それを結んだということは、代表が承認したということだ。
なのにその代表は一人オーブから姿を消し、戦場に現われては戦闘停止を呼びかける、矛盾。
呼びかけに応じない者はフリーダムが次々と堕としていく。戦うなと叫ぶすぐ側で。矛盾。


己が犯す矛盾に、彼らはどうして気づかないのだろう。


要を失くした国


よくない。

ミリアリアは眉をしかめる。
これはよくない。
始めは歓迎されていたAA。次第に皆、変わらぬ展開に飽いてきて。いまやそれは邪魔なと敵意を向けられるものになってきている。
連合によって苦しめられている土地がザフトによって救われていく。
そこに策略はあるのだろう。けれど救われた土地の住人達には関係ない。
苦しかった。辛かった。それらからの解放を喜ばないはずはない。救ってくれたザフトに感謝しないはずはない。
そのザフトを攻撃するAA。そのザフトの邪魔をするAA。好意を持たれるはずがない。

キラ達を取り巻く敵意に心が痛む。違うのだと、彼らは真実平和を思っているのだと言いたい。
けれど地上を歩くミリアリアには言えない。知っているからだ。
戦地でシャッターを切るたびに知る。レンズの先にいる人々はいつも叫ぶのだ。

AAが何をしてくれたというの。ただ戦場で叫んでいただけじゃない。MSを堕としていただけじゃない。
オーブ代表がなに。泣いてたわ。泣いて泣いて。そしてどうしてと泣いて叫んでたわ。でも守られてたわ。
私達だって泣いたわ。どうしてと叫んだわ。でも私達は誰も守ってくれなかったわ。
私達を助けてくれたのはザフトよ。連合から解放してくれたのはプラントよ。
もう大丈夫だって言ってくれたのは、今まで頑張ったねって言ってくれたのはプラントの歌姫だったわ。
AAじゃないわ。オーブの代表じゃないわ。彼らは何もしてくれなかったわ。
なのにザフトを撃つの。私達を助けてくれたザフトを撃つの。
もしかしたらこれから私達のように苦しめられている人達を助けに行ってくれるかもしれないザフトを。
私達がどれほど嬉しかったと思うの。私達がどれほど救われたと思うの。
それを彼らは奪おうというのよ。酷いわ。酷いじゃない。

思い出されるのはいつかの話し合いだ。
アスランの言葉を彼らはどう受け止めたのだろうか。あの時の受け答えでは分からない。
ミリアリアの言葉を彼らはどう受け止めたのだろうか。その後の行動からは分からない。
それでも彼らなりに考え、そして決めたのだろうと思う。だからもう連絡は取らないと決めた。
全て覚悟の上で彼らは戦場に出てくるのだろうから、と。
それなのに、ふと思うのだ。

もしかしたら、アスランの言葉もミリアリアの言葉も彼らには何ももたらさなかったのかもしれない。
彼らはこちらの声を聞いていなくて、考えてくれていなくて。その上での行動だとしたら?
そしてキラ達は今、その行動のせいで世界を敵に回しつつあることにさえ気づいていないのかもしれない。
そんな風に思ってしまうのだ。

「そんなこと、ないわよね?」

もしそうならどうしようか。この声を届けようか。けれどそれさえ届かなかったら?
ミリアリアの眉間に皺が寄る。
そんなことはないと信じたい。信じている。ミリアリアの友人はそんな人じゃなかった。
なのに、どうしても不安が拭えないのだ。

「ミリィ」

自分の思考にはまっていたミリアリアは、かけられた声に顔を上げる。
そこにいたのはミリアリアと一緒に行動している仲間で、ミリアリアはなに?と首を傾げた。
「オーブの、また現われたらしい」
「え」
どこ、と身を乗り出したミリアリアは、仲間がそれがと告げた言葉に思考が真っ白になった。














AAが戦場に現われた。
連合とザフトは戦闘に幾度も介入され、苛立つ心のままに邪魔者を排除しようと攻撃する。
それを難なくよけ、両陣営の武器を破壊していくフリーダム。
その前に一機のMSがそれを阻止しようと現われる。今まで通り難なくよけ、反撃すると思われたフリーダムは腕を失った。
一瞬動きが止まったフリーダムの隙をついたように、インパルスがAAの前で叫ぶオーブ代表を名乗る少女が乗るMSに近づいた。
フリーダムが助けようと動く。邪魔される。攻撃する。受け止められる。それを繰り返す。
少女が乗るMS、ストライクルージュを守るためにムラサメが立ちはだかる。
インパルスはムラサメとサーベルを交え、その間にストライクルージュがAAに戻るために動き出す。
連合の砲撃、ミネルバの砲撃がAAを撃つ。AAが応戦し、何とかストライクルージュを受け入れようと動く。
それがままならないと知ったAAは撤退する。ストライクルージュがそれを追い、ムラサメが追いかける。
フリーダムはしばしの逡巡の後、彼らを追いかける。




彼らは逃げ延びられたのか、はたまた撃たれてしまったのか。
それが全世界に報じられたのは、そう時間が経たないすぐのこと。

end

実はこれ「オーブに優しくない話」だと勘違いして作った話です(汗)。
リクエスト確認して、アスミアでオーブ側だということに気づき、ミリアリアと合体させていただきました。
そして、アスミア少なくてすみません。ラブラブしてなくてすいません!
もっと入れられると思ってたのに…(泣)。

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