光の中で

海に響く楽しそうな子供達の声。裸足でばしゃばしゃ海の中へと入っていく。
服を着たままだということを忘れているのか、それとも気にしていないのか、水をかけあって大はしゃぎだ。
けれどそれを砂浜に座って眺めているネオに止める気はない。
子供達が笑っている。楽しそうに声を上げて笑っている。それだけで止めない理由には十分だ。

幼い頃から殺人術を仕込まれて、戦場を駆けまわされて。
そのせいで彼らの小さな手は赤で染まっている。染めさせられた。

地球を守りたい。子供達はそのために戦っている。それは確かだ。それは確かに子供達の意思だ。だから戦いを厭わない、厭ったこともない。むしろそれを悦ぶ。けれど、そう育てられたのも確かなのだ。

「でももう戦わなくていい」

他の楽しいことを一番にしてもいいのだ。自分の好きなことを一番にしてもいいのだ。
まだ戦わなくていいことに戸惑っている子供達に、少しずつ、少しずつそれを教えていきたい。
口元を綻ばして目を伏せる。
と。

「あ、アウル!ステラ!こっちこい!」
「何だよ、スティング」
「なに?」

慌てたスティングの声。
それにバッと目を開けると、スティングが少し離れたところにいるアウルとステラの元へ向かおうとするのが見えた。
その先に見えたものにネオもげ、と慌てて立ち上がる。危ないと叫べば、ステラがネオ?と首を傾げた。
アウルも怪訝な顔をして、何気なくスティングとネオが見ている方を振り返って、げっと叫んだ。
そしてすぐ近くにいるステラを呼んで手を伸ばす。まだ気づかないステラは、不思議そうにしながらアウルの手を取って…足を滑らした。

「っの馬鹿!」

何でこんな時にこけるんだよと叫びながら、アウルがステラを抱きとめる。その様子から逃げるには間に合わないと判断したスティングが、体全体でステラを守るように抱き込むアウルとステラを抱き寄せた。
直後、


ザッパアアアンッッッ


「スティング!アウル!ステラ!」

波が三人を襲った。
ネオは身の内が冷えたのを感じながら、海へと入る。波の中から抱き合ったまま座り込んでいる三人が出てきたのにホッとして、大丈夫か!?と叫べばスティングが体を起こした。

「何とかな。アウル、ステラ、平気か?」

アウルは呆然としたままステラを抱きしめていて、ステラも瞬きを繰り返してはいるが心ここにあらず。アウルの胸元を握ったまま固まっている。

「な、に今の」
「…びっくり、した」

二人が何とか声を発すれば、スティングが苦笑して、ネオは大きく息を吐いた。
心臓がばくばくいっている。一体どこのどいつが波起こしやがった。俺の可愛い子供達に何てことしやがる。思わずそう毒づいたネオの前で、子供達はぷっと吹きだすと大笑いを始めた。
え、何。何が可笑しかったんだ?怖くて笑うしかないとかいうアレなのか?

「信っじらんねえっ、何、今の!」
「二度と体験したくねえな」
「あ、またきた」

よし、逃げんぞとスティングがネオの背を押して、アウルがステラの手を引いて海から出るために歩き出す。
その間も三人、笑ったままだ。

「…若い子の笑いのツボが分からん」
「ネオ、ネオ、早く!波きた!」
「早く行けってば。それともネオも一回かぶっとく?」
「年寄りに進めんなって。体に毒だろ?」
「俺はまだ若い!」


「いいから早く!」


三人が声を揃えて。
アウルがネオの背に蹴りを入れて。
よろめいたネオに、ステラがネオ!と声を上げて。
スティングが足腰弱ってるぞ、と呆れて。
波が到着したのは四人が砂を踏んだギリギリで。足を再び海が濡らして、子供達が楽しそうに笑った。
たったそれだけなのに。ついさっきまでは心臓が凍る思いをしたというのに。
なのに、思った。

ああ、幸せだな。

どうしてだか、泣いてしまいたかった。

end

リクエスト「戦後パラレルで幸せな新連合兄弟」でした。
仲のいい兄妹が大好きです。長男は下二人をちゃんと見てて、次男は末っ子苛めながらもちゃんと守ってて。末っ子は次男と喧嘩しながらそれでもお兄ちゃん大好きだといいです。
ちょっとアウステ入ってるのは趣味です。兄妹に見えるようにもしてみたんですが、好きじゃなかったらすいません(汗)。

リクエスト、ありがとうございました!

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