れっつ、めたもるふぉーぜ


「戻れ!何があっても戻れ!何してでも戻れ!」

鬼気迫る顔の花白に、二人の玄冬はきょとんとする。
花白はこれ以上なく真剣だ。玄冬達がどうしたものだろうかとのんびり構えているのとは違って。
「そう言われてもねえ。私だって戻りたいよ?でも何が原因なんだか、戻れないんだから仕方ないじゃないか」
鷹が毛づくろいしながらそう言えば、花白がその首にがっと手をやった。
ぐげっと声を洩らした鷹を片手で持ち上げた花白は、もう片手に剣を構える。目は完全に据わっている。

「いいから戻れ」

人型に戻れなくなった鷹は明らかな脅しに慌て、羽をバタバタさせる。
「だからちびっこ!戻れないんだって言っているだろう!?」
「知らない。戻れ」
「無茶を言わないでくれ!」
死ぬ、死ぬ!と騒ぐ鷹に、いっそこのままと花白がくっと笑った。
それに今まで傍観していた玄冬が額を押さえて、花白と声をかける。
「だって玄冬!」
「だってじゃない。本気で首絞まってるから離せ」
「う〜」
不服そうに唸って、けれど素直に鷹の首を絞めていた手を開く。するとすかさず鷹が玄冬の元へと飛んでいく。
げほげほっと咳き込む鷹に、大丈夫か?と心配そうに見下ろす玄冬。それを恨めしそうに見る花白。
それにこくろがああ、と納得したように頷いた。そして台所へと向かってお茶を淹れて戻ってくると、花白に手渡す。
「とりあえず落ち着け」
「でも」
「仕方ないだろう。あいつは動物には甘いんだ」
花白が目を見開いて、そしてばつが悪そうにこくろから目を逸らした。

玄冬は相手が動物であれば、人に対するより甘くなるところがある。
だから相手が黒鷹だと分かっていても、それが鳥型をとっていればついつい甘くなってしまう。
さっさと戻れ。何が何でも戻れ。そう強制するのはだからだ。
ただでさえ仲が良い父子だ。それ以上など見せられてたまるものか。

そう思う自分をこくろに見抜かれた。まだ幼い子供に。玄冬は全く気づいていないというのに。
とりあえず座ってお茶を一口飲む花白に、こくろが慰めるように頭を撫でた。
こういうところが玄冬に似てると思いながら、それで僅かなりと慰められた自分が悲しかった。
なのにその僅かな慰めすら玄冬が何気なしに打ち砕いた。

「まあ、そのうち戻るだろう」
「そのうち!?それまで放っておくの!?」
「ああ」
何か問題があるのか?と心底不思議そうな玄冬に、花白がそんなの嫌だとばかりに顔を歪めた。
玄冬は本気で放っておくつもりだ。確かに原因が分からない以上、手の施しようがないのかもしれない。
けれどまだ考えてもいない。調べてもいない。ただ戻れないみたいだねえという黒鷹の言葉一つでそんな。
「問題ありまくりじゃないか!あ、そうだ!白梟に聞いてみようよ!」
「あの人、滅多に鳥型にならなかったと思うんだが」
私でさえあの人が鳥型になったのを見たのは、片手で数える程だぞ?と鷹が言うのに、キッと殺意を込めて睨みつける。
戻るつもりあるのかないだろうお前!そんな視線に、これは切羽詰ってるなあと呑気な鷹が毛づくろいを再開させる。
殺気が増した。玄冬さえこの場にいなければ、今すぐさばいてやったのに!
そんな花白の隣でこくろがため息をつく。どうしてこんな空気の中、あいつはと玄冬を見上げる。
玄冬は眉をしかめてそうだな、と首を傾げていた。

「あまり戻らないようだったら聞いてみてもいいかもしれないな」

本当なんでこんなにマイペースなんだろうか、大きい俺。
こくろの呆れた視線にも、自分を間に繰り広げられている一方的だが愛憎劇にも気づかずに、
玄冬はそろそろ夕食の準備をしないとな、といそいそと台所へと向かった。
玄冬の肩に乗っていた鷹が飛んで、では私はしばらく空の散歩に行ってくるよと出て行った。

「〜〜〜っ!」
「…まあ、がんばれ」

ぽん、と色々な意味でうち震える花白の肩を叩いたこくろは、同情はしていたが基本的に玄冬達と同じ。
そのうち戻るだろうと、黒鷹のことを放っておく気満々だった。

end

リクエスト「黒鷹が鷹の姿から一時期人間の姿に戻れなくなる話」でした。
タイトルふざけててすみません。他に思いつかなかった…(汗)。
時間軸は打鶏肉で戻れなくなった鷹の頃ではなく、二度目の戻れなくなった鷹でお願いします。
そして花白が可哀想な話になってしまいましたが、花白と救世主はマイペースに見せて、もの凄い繊細だと思ってます。
黒兄弟VS白兄弟(こはな除く)やったら、きっと白兄弟はストレス溜まって爆発すると思ってます(お前黒兄弟を何だと)。

リクエスト、ありがとうございました!

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