花と花に愛される花

両手に花。
それは目の前で食事をとる青年のことだ。右手に左手に、それぞれ可愛い女の子を侍らせている。
が、しかし。

「俺って人生勝ち組…っ!」

ぐっと拳を握ったネオに、目の前の美人三人がえ?と顔を上げた。

一人はミーア・キャンベル。
ラクス・クラインそっくりの可愛らしい顔に、くるくると変化する表情と生来のものだろうか。
明るい性格が加わって、大層目を惹く女の子。ついでに巨乳。スタイル抜群。

一人はメイリン・ホーク。
小動物を思わせる可愛らしい女の子で、庇護欲をそそられる。
けれどいざとなれば大きな目に力強い光を宿し、信じたもののために最大限の行動をとる頼もしさを持っている。

一人はアスラン・ザラ。
女性顔負けの綺麗な顔で、どこか儚さを見せる青年。けれどザフトの伝説のエースと呼ばれるほどの腕を持った軍人。
一度心を定めれば恐ろしいほどの強さを発揮するが、それまでは実に情緒不安定。
脆く、弱く、そして強い。自分の限界を超えてでも戦い続ける彼を、上記二人は言う。守ってあげたい。

そんな三人と食事。
コーディネーターは美人が多いことでも有名だが、それぞれの性格が美人に相乗効果を与えており、ネオにとってはこの世の天国。ビバ俺!

そうして幸せを噛みしめていると、美人三人の目が心配を通り越して不審な色を宿し始めたので、慌てて咳払いをする。
…不審そうな色は消えなかったけれど。

そんな危機も脱し、軽くつまむどころか少し早い夕食となってしまったネオ達は、食べ終わると食後の散歩と称して艦内を歩くことにした。
ネオの後ろをアスランが歩き、ミーアとメイリンがアスランの右腕と左腕にそれぞれ抱きついている。
非常に羨ましい状態を見ずにすむのは幸いだが、微妙に孤独だ。

「あ、ネオさんネオさん」
「ん〜?」
ミーアの声に振り向けば、あのね、とアスランの腕を抱いたまま身を乗り出してきた。
ミーア、と引っ張られる形になったアスランにたしなめられて、ミーアがごめんなさあいと舌を出す。うん、可愛い。
「でね、ネオさん。男の人の部屋にぬいぐるみがあるのってどう思います?」
突然の思わぬ質問にへ?と声を洩らす。思わず足を止めれば三人も止まる。
ミーアだけでなくメイリンまでじっとネオを見ている。どうやら二人にとっては大事な質問らしい。
ん〜と三人に向き合って、いいんじゃない?と首を傾ける。
「個人の自由だろ?」
「おかしいとか思います?」
今度はメイリン。小さく首を傾げる姿が実によく似合っている。
「俺は別に思わないけど?」
ミーアとメイリンはその答えにホッとしたように顔を見合わせて笑った。そしてアスランを見上げて言った。

「あたし達のうさぎ、アスランの部屋にいさせてね」

ミーアのお願いに、アスランがは?と目を軽く見開いた。
「いや、二人共、気に入ってるんだろう?」
「もちろんです。だからアスランさんの部屋にいさせてほしいんです」
「は?」
意味が分からない、と顔に書いてあるアスランと同様ネオにも分からない。けれど次の言葉で理解した。

「あのこ達がいれば、夜だって寂しくないわよ」
「それに私達もあのこ達に会いに行きますから」

絶対一人にしたりしないと言外に。
お気に入りのぬいぐるみがあるのだから、それを放っていなくなったりなどしないと。
アスランの側には自分達がいるのだと覚えていてと。

一人でぐるぐると悩んで、無理をして、自分のせいだと言っては自分ばかりを責める愛しい人。
失うことを恐れているくせに、失うことに慣れてしまった愛しい人。
その人に自分達は側にいるからと、離れてなどいかないからと、あなたは一人なんかじゃないからと。


二匹のうさぎは約束の形。


「可愛いじゃないの」

くすりとネオが笑う前で、ミーアとメイリンがお願い、と両手を組んで上目遣いで言うのに、アスランは不思議そうな顔をしていたが頷く。
どうしてあの可愛らしい仕草によろめかないのか、それがネオには不思議で仕方がない。
ミーアとメイリンはアスランが頷くと、きゃあ!と喜びの声を上げて、両手でぱちんと互いの手を合わせた。

「私のこは『めい』って呼んでくださいね」
「え?」
「あたしのは『みい』ね」
「は?」
メイリンの『めい』とミーアの『みい』。どこまでも二人を思い出させようとする名前に、ネオはこの果報者めと笑う。
そしてにや、と笑うネオの姿に眉を寄せたアスランに一言。

「よ、色男!」

「は?」

ミーアとメイリンが笑って、またアスランの腕に抱きついた。

end

リクエスト「花、花、花。」の 続編でした。
書きながらアスランになりたいと思いました(笑)。

アスランはきっと何も気づいてないと思います。ミーアとメイリンも分かってないことは分かってます。
でも辛い時にちょっと癒されたらいいなあ。自分達のことを思い出してくれたらいいなあと思ってます。

リクエスト、ありがとうございました!

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