父、シャルルが妻、マリアンヌと共に経営する芸能事務所がある。その名をキングダム・ブリタニア。
両親は素晴らしい名だと満足そうにしているが、二人の息子は冷めた目で事務所にかかる看板を見るのが日課だ。
彼らは今日も今日とてそんな様子で看板を見上げ、ふっと何かを諦めたような顔で事務所へと入っていった。


The fate of the child

長男、シュナイゼルと次男、ルルーシュは、他人様の子供を預かる以上、私達の子供もデビューさせるべきよ!という母と、天下取れずして何のブリタニアの血か!という父の強制という名のお願いのせいで事務所に業界人として名を連ねている。
両親二人の本音は、綺麗な子供達を見せびらかしたいの一念に尽きたのだが、肝心の子供達は最小限の仕事しか受けようとしない。しかもモデル限定。やるだけ感謝しろ。そう二人は言う。
そんな兄弟は今、社長室でハイテンションな両親と違ってローテンションでソファに腰掛けていた。冷めた目と完全無表情で。

「よいか、シュナイゼル、ルルーシュ!モデルしかせんという我侭は今回は許さん!」

我侭は貴様だ、と二対の目が据わった。

「さすが私達の息子ね。知る人ぞ知る、なんて仕事の仕方だったのに、あの巨匠の目に留まるなんてお母さん誇らしいわ」

こちらは欠片も誇らしさなど感じない、と白い面がうんざりといったように表情を変え、ため息をついた。

映画界で名を馳せる巨匠より、シュナイゼルとルルーシュに出演依頼がきた。
シュナイゼルは最後にようやく顔を出す悪役。ルルーシュはちらほらと主人公の前に顔を出すが、実は主人公が対峙する悪役の共犯者。出番は少ないが大きな役だ。

「二人の存在感が欲しいんですって。人が圧倒されるような存在感、得意でしょう?」

まるで特技のように言うが、別に得意というわけではない。それが二人の常だというだけだ。普段は人間関係を構築するにあたって妨げになるので抑えているだけで。

「この間出したポスターがな、先方のイメージにあったのだ」

なるほど、そのせいでモデルの次は俳優業。
二人は互いに顔を見合わせる。ああ、凄く嫌そうだ、と同時に思った。

「盛り上がっていらっしゃるところ申し訳ありませんが、私もルルーシュも受けるつもりはありません」
「許さんと言ったであろう!」
「そうよ、二人共。こんな大きな仕事を断るなんて失礼だわ」
「ならモデルやめます」
「ルルゥゥゥシュ!!」
「何てこと言うのかしら、この子は」
いつまで経っても子供ね、とため息をつくマリアンヌと、やめさせんぞと叫ぶシャルル。
本当にこの二人の血が自分達に流れているのか。信じられない、信じたくない。
聞き分けのない子供を窘める父と母、という状況下、聞き分けのない父と母のせいで迷惑を被る兄弟は、一般人に戻りたい、と呟いた。

芸能界になど興味はなかった。
確かに兄弟二人揃って外見は極上。幼い頃から周りにちやほやと騒がれて育った。
そんな幼少時を過ごせば天狗になるのが普通なのだが、二人は違った。
何故か。二人の性格の問題でもあっただろうが、一番の原因は彼らの両親だ。
彼らの両親は二人揃ってテンションが高かった。はちゃめちゃな思考をしていた。そしてその思考を実行できるだけの実力と自信を持っていた。
そんな両親の被害を受けて育った兄弟は、自信を持つことは悪いことではない。だがしかし、それを前面に押し出せば両親のような人間になる。それは嫌だ。絶対嫌だ。静かに暮らそう。両親のような歩く迷惑にならないように静かに静かに暮らそう。そんなことを考える人間になった。
そんな彼らが芸能人という目立つ存在に憧れるはずがない。なのに彼らは芸能業界に足を踏み入れた。両親のせいで。

あれはシュナイゼルがまだ十六の頃だ。ルルーシュは六歳。
学校が終わって家に帰ってきたシュナイゼルは、先に帰っていたルルーシュを膝に乗せて今日一日の出来事を聞いていた。
こういうことは母親に話したがるものだろうに、ルルーシュはシュナイゼルに一番懐いていた。そしてシュナイゼルもルルーシュを可愛がっていた。故にルルーシュの今日の出来事はいつもシュナイゼルが聞くことになっていた。恐らく母親よりもルルーシュに詳しいだろう。

そんないつもの時間を過ごしていた兄弟を母親が笑顔でシュナイゼルとルルーシュを呼んだ。
その瞬間、ぞぞっと背筋を這い上がる寒気を覚えた兄弟は、聞こえなかったことにしてその場を立ち去ろうとした。こういう感覚を味わう時の母はろくでもないことを考えている。それを経験で知っていたからだ。
シュナイゼルに抱き上げられたルルーシュが、ぎゅうっと兄にしがみつくのもそれを幼いながらにそれを知っていたからだ。
そんな兄弟に母、マリアンヌは言った。


「あら、私達に全権を預けてくれるのね」


なら任せてちょうだい、と。
それは恐ろしい言葉だ。基本的に怖いものなど存在しない兄弟を恐怖へと陥れる言葉だ。
さああっと血の気が引いた顔で振り向けば、実はもうお仕事とってあるの、とマリアンヌがいい笑顔で手をぱちん、と合わせた。
何の話だ。仕事って何。そんな兄弟が知らない間に両親が経営する芸能事務所に所属させられ、仕事を取ってこられたのだと知ったのはそのすぐ後のことだ。
静かに暮らしたいと願っていた兄弟が奮闘した結果、何とかモデル限定での譲歩を得られることになった。学生は勉学が基本だということを盾にとって、仕事を最小限に抑えることにも成功した。
それでもいつか絶対やめてやる。そう思って十年。両親と兄弟の間で仕事の拡大や引退についての口論も交えて十年。いっそ二人で姿をくらましてやろうかと話し合ってすぐにまさかこんな。

「凄いですね」
「そうだね」
この仕事が好きなんだろうね、と兄弟は目の前で生き生きと演技する俳優達を見ている。
結局両親に強引に押し切られた兄弟は、映画の撮影現場にいた。
「いつも思うんですが、俺達みたいにやる気のない人間がいていいんでしょうか」
「よくないんじゃないかな。やりたくてやっている人間には失礼だと思うよ」
ですよね、とルルーシュが頷く。
やる気はない。全くない。できればやりたくない。そんな心根の人間は、他の人間のためにも早々にいなくなったほうがいい、と二人は思っているのに、何故ここにいるのだろうか。
受けてしまったからだ。両親が二人に黙ってこの仕事を受けてしまったからだ。そうである以上、やるしかない。受けたからにはしっかりとする。これは遊びではなく仕事なのだから。これで金をもらっているのだから。
「…いつか漬け込まれそうですね」
「この仕事が終わったら危ないだろうね」
この性格に両親が漬け込む可能性は高い。モデルしかしないと言った二人がモデルではない仕事を嫌々とはいえ受けたのだ。おそらく気づいた。

「……厄介だ」

二人揃ってため息をつく。
それを合図に、というわけではないが、そろそろシュナイゼルの出番らしい。顔出しはしない。影だけだ。
入ってくれと言われて返事をしたシュナイゼルが、ルルーシュに持っていた台本を渡す。

「いってくるよ」
「いってらっしゃい」

微笑みあう兄弟は実に目の保養だった。

end

リクエスト「兄弟前提で2人共芸能人なシュナルル」でした。
…何か迷惑な両親とその被害者みたいな話になってしまいました(汗)
そして両親に対して愛情はあるので本気で姿をくらませられない二人です。両親は親馬鹿です(笑)

どうでもいいですが、ルルーシュの役は正体ばれたら駄目なんで女装してました。
で、正体ばらす時は足組んで一人がけのソファに座るシュナイゼルの横に立っているという。
そんな自分が萌えるだけの本当にどうでもいいことまで考えてました(笑)

リクエスト、ありがとうございました!

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送