彩り溢れる庭でルルーシュとユーフェミアとナナリーがじゃれあっている。
それを眺めるのはシュナイゼルとコーネリアだ。クロヴィスはスケッチブックにしきりに筆を走らせている。

「それにしても安心いたしました」
「うん?」
「ルルーシュの記憶のことです」
戻ってよかった。
そう微笑むコーネリアにシュナイゼルも頷く。けれどその表情はどこかばつが悪そうだ。その理由を知る弟妹が小さく笑った。
「全ての鍵は兄上が握ってらしたんですね」
スケッチブックから顔を上げたクロヴィスが言えば、コーネリアも同意した。

ルルーシュの記憶は戻った。
誰もその場にいなかったためその状況を知らないのだが、二人が久しぶりに話していることを知っているユーフェミアとナナリーとクロヴィスの前、真っ赤な顔をしたルルーシュがアリエスの宮に慌てて帰ってきて、その後をシュナイゼルが苦笑しながら追いかけてきて。そうしてルルーシュが兄様ではなく兄上、とシュナイゼルを呼んだ。それでルルーシュの記憶が戻ったことを知った。
そうしてそのことを歓喜した周囲が落ち着いた後、妹二人がどうして戻ったのかをルルーシュから聞き出した。ルルーシュが妹二人に弱いことを知って泣き真似までして。
それによると、どうやらシュナイゼルと心通じ合ったその瞬間に戻ったということらしい。
シュナイゼルへの絶望的な片恋に苦しんで失くした記憶だ。実は両想いだったと分かったなら失くす理由はどこにもない。
ああ、なるほど。とクロヴィスと妹二人は納得した。
ルルーシュは見えるところ全てを真っ赤に染めてうつむき、シュナイゼルはばつが悪そうな顔で在らぬ方を見ていたけれど。

「迷惑をかけてすまなかったね」
こうして思い返してみれば、事の元凶は自分だったのではないか、とシュナイゼルは思う。
だからこその謝罪なのだが、弟妹は笑っていいえ、と首を横に振った。
「兄上も私と同じ年なのだと、初めて思えましたから」
「兄上も完全じゃないのだと分かりました」
手の届かないところにいるのだと思っていた兄が、意外と身近に立っていたのだと知ったいい機会だった。
そう思うのは今が笑っていられるからだろうけれど。
シュナイゼルが何ともいえない顔をした。







「それでルルーシュ?」
「何だ?」
腰を曲げたユーフェミアがルルーシュの顔を覗き込むようにして呼ぶのに、ルルーシュは何の警戒もなく聞き返す。
淡い桃色の花を口元に、ユーフェミアの目が楽しそうに笑んだ。

「キスはした?」

「はあ!?」
「あ、私も知りたいです、お姉様!」
ナナリーが手を挙げて、わくわくという顔をして言えば、な、な、な、とどもったルルーシュが、ぼんっと真っ赤になった。
後ずさりすれば、がしっと抱かれる両腕。妹二人が顔を近づけてきて、した?しました?と目をきらきらさせて聞いてくる。
「き、聞いてどうするんだ!」
「どうもしないわ。知りたいだけよ。ねー?ナナリー」
「はい!知りたいです、お姉様」
キスはした?どんなキス?お兄様はキスが上手い?ねえ、ねえ、ねえ?
問い詰められて声も出ないルルーシュは、脳裏に思い出したシュナイゼルとのそういう状況に更に真っ赤になった。感触まで思い出してしまった。
それを見逃す妹達ではない。

「したのね?」
「きゃあ!」
ナナリーが歓声を上げた。
「やっぱり上手いの?お兄様」
「や、やっぱりって」
「上手そうな顔をしてらっしゃるでしょう?お姉様」
「顔?顔で決まるものか!?」
「で、上手いの?」
「どんな感じですか?」
「ルルーシュ」
「お姉様」

何の拷問だ。
可愛い妹達の腕を無理やり引き剥がせるはずもないルルーシュは、泣きそうになりながらこちらを眺めている兄姉に助けを求める。
が、コーネリアは微笑ましそうに、むしろ陶酔したようにこちらを見ているだけだし、クロヴィスは必死に筆を走らせている。残ったシュナイゼルは、ルルーシュと目が合うなり微笑むので、ルルーシュの心臓が爆発しそうになって慌てて視線を外した。

ああ、どうしてこんなことに。

けれどこれはこれで幸せなのかもしれない。
いつの間にかこちらに歩んできていたシュナイゼルが、その腕にルルーシュを取り戻す中、ルルーシュは思った。

end

リクエスト「シュナルル♀記憶喪失設定」でした。
記憶喪失設定を生かせているのかどうか…実に悩みどころですが、シュナイゼルのあまりのへたれ振りに驚きました。
そして一番肝心な記憶戻る&告白シーン飛ばしてすみませんでした(汗)

リクエスト、ありがとうございました!

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