願いごと

契約。その上で成り立つ関係だとしても。

「ねえ、C.C.」
「何だ?マオ」
「今日なんだよね?流れ星がいっぱい落ちてくるの!」
「ああ、そうだ」
それを見るために、いつもならば寝かしつけている時間に二人そろって外にいる。
住処としている小さな小屋の前、マオと二人。防寒はしているとはいえ、やはり冬。吐く息が白いマオを後ろから抱きしめる。
マオは嬉しそうにC.C.の腕を掴み、その小さな体を預けてくる。
「まだ?」
「もうすぐだ」
わくわくとした様子を隠さずに、マオが空を見上げている。
可愛い。養い子であり契約者である子供に笑みが洩れる。

本当ならこんな幼い子供に契約を迫りたくなどなかった。マオはきっと分かっていない、契約の意味を。
マオにとって契約とは、C.C.がマオの側にいるという約束なのだ。
その契約のせいでこんな山奥に二人、追い込まれることになったのだとしても、マオはC.C.に全幅の信頼と愛情を向ける。
それを嬉しいと思うと同時に、苦しくもなる。その感情は罪悪感からなのか愛情からなのかは分からないけれど。

「あ!C.C.見て!」
マオがC.C.の腕の中から身を乗り出し、空を指差した。その先に視線をやって、ほう、と声を洩らす。
「すごい。すごいね、C.C.!」
「ああ、そうだな」
星が流れる。あ、と思う間に消え、新たに星が流れてまた消える。
次から次へと落ちては消える星に思わず魅入るが、すごいすごいと騒いでいたマオがやけに静かだ。
どうしたのだろうと視線を落とせば、両手を組んで懸命に何かを祈っているよう。
「マオ?」
呼べばマオが顔を上げる。その顔は満足そうで、C.C.は首を傾げた。
「何をしていたんだ?」
「あのね、星に願い事したら叶うって絵本にあったから」
「絵本…この間買ってきた本か」
そういえばあった。マオはその絵本が気に入ったらしく、何度も読んでくれとC.C.にせがんでいた。
ああ、とC.C.は頷く。
「願い事をしていたのか」
「うん!C.C.とずっとずーっと一緒にいられますようにって!」

可愛いと思う。愛しいと思う。けれど同時に可哀想だと思う。
C.C.と出会ったばかりに、マオはC.C.以外の人間と接することができない。
とめどなく流れてくる多数の人間の思考。プラスの思考ばかりではなく、マイナスの思考も容赦なくマオに流れ込む。
まだ六歳だ。そんな子供が、大人でも耐えられない他人の思考を頭の中で聞き続ける。
C.C.はマオに恨まれても仕方がないというのに、マオは笑う。C.C.が大好きだと。
そして星に願う。C.C.とずっと一緒にいたいと。

C.C.は泣きたいような心地で微笑む。
「マオ。星に願わなくても、私はマオといるよ」
「うん。でもね、C.C.を誰かがつれてっちゃうかもしれないでしょ?だから星にもお願いしなきゃ」
ぐっと拳を握って言うマオに、C.C.はくすっと笑う。
それにマオがムッとしたような顔でC.C.にしがみつく。
「だってC.C.は僕のでしょ?誰にもあげないよ!」
「そうだな、マオ」
C.C.はマオの頭を撫でると、ぎゅっと抱きしめる。
迷わず抱き返される小さな腕に、C.C.は温かな気持ちになる。

マオに対する罪悪感はあるけれど、それでも出会えてよかったと思うのはこういう時だ。
申し訳ないとも思うのに、嬉しいとも思う。ずっとこうして抱きしめていたいと思う。

「好きだよ、マオ」
「うん!僕もC.C.大好きだよ!」

その言葉をずっと聞いていたい、と思うのだ。

end

リクエスト「マオCでラブラブ話」でした。
あやうく切ない話になりそうでした。そっちは却下で慌てて軌道修正(汗)。

リクエスト、ありがとうございました!

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送