「ルルーシュ、ルルーシュ!」
ユーフェミアの声に気づいたルルーシュは、読んでいた本から顔を上げる。
そして中庭から突っ切ってやってくる妹の姿に溜息をついた。
「ユフィ。いくら近道でも庭を突っ切るなって何度も言ってるだろう?」
「はあい。でね!ルルーシュ!」
聞いてないだろう、とルルーシュが肩を落とすが、ユーフェミアはあのね、とルルーシュの両手を握って、ずいっと顔を近づける。
「なっ、ユフィ!?」
その行動にぎょっとして、けれど微かに頬を赤らめたルルーシュは、ユーフェミアから距離を取ろうとする。
手を掴まれているため、一歩下ることしかできなかったが。
ユーフェミアはそれに気づいた様子もなく、目を輝かせて言った。

「ルルーシュを一日、私にちょうだい!!」

「……………は?」

元々、突拍子もないことを言うわやるわの妹姫は、今日もまたルルーシュを混乱の渦の中へと突き落とした。


花を飾ろう

ルルーシュとユーフェミアは、花畑にちょこんと座っていた。
ユーフェミアは鼻歌を歌いながら花輪を編み、ルルーシュはそれを眺めている。
「できたわ、ルルーシュ」
顔を上げたユーフェミアは、はい、とルルーシュの右腕に花輪を飾る。
ルルーシュの頭に首にそして右腕に飾られた花輪。次は左腕だろうか、嬉しそうにユーフェミアが花を摘んだ。

「なあ、ユフィ」
「なあに?ルルーシュ」
「もう十分じゃないか?花輪」
「だめよ。左手が寂しいもの」
「けど、ユフィ。こういうのは俺よりユフィの方が似合うのに」

その桃色の髪に色とりどりの花はさぞかし映えるだろうし、ユフィの笑顔に花は何より似合いだ。
男の自分よりその方が見た目もいいし、花にとってもいいだろうに。
けれどユーフェミアは不思議そうな顔でルルーシュを見た。

「あら、ルルーシュ。すごく似合ってるわよ?ルルーシュったら花が負けちゃうくらいきれいだもの」

本気で言っているのが分かって、ルルーシュはうなだれる。
きれいと言われるのは別に構わない。可愛らしいと言われるよりマシだ。
ルルーシュ自身もきれいだと思う男がいる。シュナイゼルやクロヴィスはその最たるものだ。
だからきれいはいい。別に抵抗はない、が。

ユフィには言われたくなかった…!!

きれいよりかっこいいと言われたい。そんな心理は気になる女の子に対して持つ当たり前の欲求だ。
けれどユーフェミアを妹と捉えているルルーシュは、自分の胸の内に潜む想いに気づいておらず、それを兄としてのプライドのためと解釈する。
そしてその解釈に納得すると、次はどうやってこれ以上花で飾られることを避けるかに思考を移した。
花が似合うと言われた。それがきれいだと言われた。ならばこれ以上、飾られてなるものか。
そんな思考の間の沈黙にユーフェミアが顔を上げた。どうしたの?と不思議そうに問われ、それに思考の外でうん、と返す。

それにしても器用だなと思う。一本一本きれいに編みこまれ、形良く輪を作っていく。
自分はああも上手く作れるだろうかと理論を組み立ててみる。
理論通りにすればできるだろう。けれどユーフェミアとは花輪を作る過程への楽しさが違う気がする。
その違いが、ユーフェミアによって作られた花輪のような優しさを持つか否かの決定的な差になるのではないだろうか。

ここに兄姉がいれば苦笑し、頭を抱えるだろうことを本気で考えるルルーシュは、ユーフェミアが顔を曇らせているのに気づく。
「ユフィ?」
どうしたんだ、と聞けばしゅんとユーフェミアがうつむいた。
「…怒ってる?ルルーシュ」
「え?」
「だってルルーシュ、本当はあの本読んじゃいたかったんでしょ?」
あの本というのは、ユーフェミアが訪ねてくるまで読んでいた本のことだろう。それならば確かに。
けれどそれがどうしたというのだろうか。本を読むのをやめてユーフェミアにつきあうことにしたのはルルーシュだ。押し切られたと言われれば否定はできないが、それでも今ルルーシュは本も持たずにここにいる。
「ごめんね」
けれどルルーシュの沈黙が読書を中断させられ、連れ出されたせいと考えたユーフェミアは謝る。
その泣き出しそうな声に、ルルーシュは慌てる。
どうすればユーフェミアは笑ってくれるだろう。何と言えばユーフェミアは笑ってくれるだろう。
そう思って、視界に入ったものにそうだ、と思いつく。

「ユフィ」

ユーフェミアの右手をそっと取り、ルルーシュはその薬指に今摘んだ花の茎を巻く。外れないように、花の形が崩れないように、と慎重に。
きょとんとした顔でそれを見ていたユーフェミアに、ルルーシュは微笑む。

「やっぱりユフィの方が似合うよ」
「え?」

「花はユフィの方が似合う」

ユーフェミアがルルーシュと花の指輪を交互に見て、そうして嬉しそうに笑ったのに、ルルーシュは笑みを深めた。

end

リクエスト「ルルーシュとユーフェミアの子供時代」でした。

どうしてユフィがこんな行動したのかという理由を、この後ナナリーがシュナイゼルに話すシーンがあったんですが、 長くなってしまったので、メインはルルユフィだ、と却下しました(汗)。
なので簡単に言うと、ナナリーとやったあみだくじで「ルルーシュ一日独占権」を獲得しました。
ついでにナナリーは「クロヴィスと大縄跳び」です。縄はマリアンヌとシュナイゼルが回してくれます(笑)。

リクエスト、ありがとうございました!

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